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2014.04/07 樹脂の熱膨張あるいは熱収縮(4)

樹脂の熱膨張あるいは熱収縮は、熱機械分析装置(TMA)で求める。Tgまでの熱膨張と熱収縮であればヒステリシス(注)は、現れないはずであるが、大きなヒステリシスが観察されることがある。昨日例示したポリオレフィン樹脂ではその大きさが射出成型条件に依存する。

 

樹脂に微粒子を分散した場合にも大きなヒステリシスが観察されることがある。この場合に、樹脂単体のヒステリシスと微粒子を分散した場合のヒステリシスを比較すると、微粒子の添加量によってもその大きさが変化する様子を観察することが可能である。

 

この樹脂のヒステリシスの大きさが問題になるのは、物性の異なる材料とマクロ複合化して製品を組み立てる場合である。この時昇温時の線膨張率を基に設計すると失敗する。ヒステリシスを考慮していないために熱収縮歪みが大きくなったときに材料は破壊する。

 

ヒートサイクルが繰り返される用途にこのような材料を用いるときにTMAデータは不可欠である。ある装置メーカーにTMAの売り上げが落ちていることを聞いた。TGAやDSCに比較してTMAはその重要性が分からないと導入されないらしい。

 

しかし材料開発を行うときに線膨張率は重要な因子の一つで、その測定は欠かせないはずである。また、Tgについては、DSC測定でうまく現れないときにTMAでは必ず観察されるのでDSCとTMAの両者のTg評価は必要になる。また両者のTgの違いを考察することも重要である。

 

高分子のTgについては、まだ解明されていない部分が残っている。熱膨張と熱収縮の測定目的だけで無く、DSCで計測されたTgと比較する目的でもTMAは重要である。

 

(注)ある状態が現在加えられている力だけでなく、過去に加えられた力に依存して変化する事。履歴効果。

 

カテゴリー : 連載 電気/電子材料 高分子

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