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2014.06/23 カオス混合(13)

面白い男が出社したのでマネージャーとともに呼び出し、15分ほどミーティングを行った。実験結果の説明を受けながら、金型の図面を見て驚いた。リップ部の設計がPETの押出成形で用いていたTダイと少し異なり、並行平面となっていたのだ。

 

そして面白い男はPPSと6ナイロン、カーボンの組成のベルトをサンプリングするときに、試作していたベルトではなく、試作終了後に押出機に残っていたコンパウンドを清掃のため装置の最大速度で押し出したベルトを採取していた。

 

なぜそのベルトをサンプルにしたのか尋ねたところ、試作で流れているベルトについてはすでに過去に測定済みで、少しベルトのTgがコンパウンドのそれよりも下がっていることを知っていたからという。さらに、最大速度で押し出したベルトでも同様の結果であれば、上司の言っていることは間違っている、と自信を持って報告できると考えた、と応えてきた。

 

頼もしい男である。当方は、普通に押し出したのではベルトのTgとコンパウンドのTgが大きく変化しないことは知っていた、と自分で測定したDSCのデータを見せた。さらにDSC以外に自分で計測していた粘弾性のデータを見せて、粘弾性の装置の中で混練を進めるとTgが下がってゆくという現象を説明した。

 

彼の目が輝くのが分かった。そして彼は口を開き、ご自分で計られたのですか、感動しました、と言ったので、どう思う、と問いかけたら、以前の会社の上司は、決して自分で実験をしない人だったので、と脱力感を味わう答が返ってきた。目が輝いたのは、部長にもなって実験をしている上司に対して驚いていたのだ。

 

感動して欲しかったのは、粘弾性測定装置のパラレルプレートを回転させて混練を行うと、損失係数のピーク温度が下がってゆく現象だ、と説明した。そして、ベルト成形機の押出速度を上げて実験を行うと、このデータを再現できる可能性があり、それを君に指示しようと思っていたところだ、と付け加えた。

 

すごいですね、予想されていたのですか、と彼は驚いていた。素直に驚かれると金型のリップ構造を知らなかった当方は恥ずかしいが、兎に角カオス混合を実験できそうな装置が身近にあることが分かった。

カテゴリー : 連載 高分子

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