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2014.08/05 技術者の企画提案力(10)

金属やセラミックス、高分子に関する材料科学は20世紀著しい進歩を遂げた。その進歩が材料技術を牽引した時代でもあった。しかし、21世紀に入り材料科学の進歩は緩やかになった。イノベーションの中心はSTAP細胞の騒動に見られるように生科学分野へ移った

 

新材料により新たな機能が見つかり、その機能を活用して新技術ができていた時代から、市場で求められる商品に対して技術者が自ら機能設計をしなくてはいけない時代を経て、いまや市場で価値を顧客とともに創り出す時代になった。そして市場で共創された価値を実現するための機能を技術者は考えなくてはいけない時代である。

 

実はこのような価値の共創という作業は20世紀にも行われていた。例えば新商品企画会議がそれである。そこでは各部門から集められた責任者が新商品の姿を討議し、その結果を各部門に持ち帰り、各部門の技術者がその責任領域で求められる機能を考える作業を行っていた。すなわち共創を行う場が社外になっただけである。

 

定まった市場をターゲットにして開発を行ってきた企業では、新機能を考えなくても従来からの機能の性能を上げるだけでよかった。しかし、今は定まった市場ではコスト競争に曝されたために機能の性能向上とともにコストダウンも行わなければならない時代である。

 

とにかく従来の延長線上で安直な企画を立てていたのでは事業の先行きが心配される。業界1位だったゴム会社でさえ、先行きを心配して新たな事業へ挑戦したのである。新たな事業へ挑戦を行いつつ世界一位まで上り詰めた。このような企業は社内で常にイノベーションを起こそうとする風土があり、研究所で技術者は事業企画ができなければ生き残っていけない厳しい風土である。すなわち研究だけ安直にやっていては給料が増えない会社であった。

 

当方が新入社員時代の指導社員は、レオロジ-の専門家であっただけでなく、シミュレーション技術者でもあり、ゴム屋でもあった。さらに優秀な企画マンというマルチな技術者だった。彼は、常に企画を考えていなければこの会社で生き残っていけない、というのが口癖だった。すなわち技術者として生きてゆくためには企画能力が必要と教えてくれた。

 

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