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2014.09/14 技術者の専門(4)

短期間でコンパウンド生産工場の立ち上げに成功したことは自信になった。一方でトップメーカーの技術者が実現できなかった技術なので日本のコンパウンドメーカーの技術力に不安を感じた。

 

またコンパウンドメーカーに提案しても実施してもらえなかった技術も短期間で幾つか実現した。たとえば無担ベルトの押出成形においてコンパウンド段階でベルト性能を予測できる評価技術やフローリー・ハギンズ理論に反する高分子の相溶化技術などである。短期間にできたこれらの技術をできない、といっていた技術者はスキルが低いと思われる。

 

但し一連の技術は、ゴム会社の指導社員から30年前伝承された知識を用いた成果である。このことがきっかけで、実務の担当期間よりもその伝承者のスキルに技術者の成長は左右されると考えるよりどころとなっている。混練技術以外の専門は、いずれも実務経験が2年以上あるが、混練技術はたった3ケ月樹脂補強ゴムのテーマを担当しただけだった。その程度のスキルが現在でも通用したのである。

 

この体験から、技術の伝承というものがマネジメントの重要なテーマの一つだと思っている。このテーマに企業全体として取り組んでいるメーカーとそうでないメーカーとの差は歴然で、それは教育システムだけでなく風土にも現れている。あるいは企業風土が技術の伝承を促進していると表現した方が正しいかもしれない。

 

技術者のスキルは、技術者本人の自己実現意欲が高ければ企業の施策とは無関係に高まってゆくと思われるが、その成長スピードは経営者の取り組み次第で変化する。ゴム会社では「二年経ったら専門家」あるいはその実務を「二年経験したら専門家」とよく言われた。

 

しかし、写真会社ではそのような言葉を聞いたことがない。赴任したその日に今日からあなたはこの専門です、といわれて驚いた思い出がある。技術者の専門とは一朝一夕にそのスキルが高まるわけではない。専門を身につけるにも一定期間その実務体験が必要となる。

 

写真会社に転職した時に自ら年下の技術者の下につき、フィルム技術のスキルを磨いた。当時年上の技術者にスキルが高い人がいなかったからだ。仕事を手伝いながらなぜこのような状況になっているのか観察した。しかしすぐにその答えが出た。リストラでその部門が無くなったのだ。フィルム会社でフィルム技術を開発するセンターを簡単にリストラする勇気にびっくりした。

 

 

 

カテゴリー : 一般

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