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2014.11/05 問題解決プロセス(3)

図書室で多変量解析の教科書を見つけた。それは出版されたばかりの奥野先生の本で、まだ世の中に多変量解析が一般的ではないが、その普及を目指すために、と書かれていた。昨今ビッグデータが騒がれているが、40年近く前にすでにビッグデータを処理していた人たちがいたのだ。

 

例えば洋服の採寸などを行い、A体やAB体など体形に分類し既製服の型紙を作る作業には当時主成分分析がすでに使われていた。ただし今のようなパソコンで計算するスタイルではなく、大型のコンピューターのプログラムパッケージを使用しなければいけなかった。だから一般には多変量解析など専門家の仕事になっていた。

 

とにかく難解な本を斜め読みし、関係するページを人数分コピーした。そしてその内容を理解し終えたときには終業時刻になっていた。端末の置いてある部屋に戻ってみると、まだ端末の前で皆が議論しながら操作していた。部屋の中はアウトプットの用紙であふれていた。連続帳票用紙一箱がすでに空になっていた。

 

会議室に戻り、多変量解析の知識の共有化作業を行った。面白いことに大量の出力データの中に重回帰分析を正しく使ったときの答が一つ出力されていた。やればできるじゃないの、と誰かが叫んだ。IBMの統計パッケージは良くできたソフトであった。従属変数の相関が出てくると段階式重回帰分析に移行するようにプログラミングされていた。

 

得られた式で各社の技術を組み合わせて軽量化したときのタイヤ重量を推定してみたところ、当時最も軽量であったM社のタイヤ重量を下回る値が得られた。M社のタイヤと最軽量タイヤとの違いは、トレッドの厚みとショルダー部の設計など数カ所だけだった。ただその設計要素をM社のタイヤに適用することができない、と指導社員は説明し、M社はかなり軽量化を実現できているタイヤだと感心しながら説明していた。

 

この指導社員の解説には新入社員からブーイングが起きた。他社を凌ぐ技術で世界一最軽量のタイヤの設計指針を見いだすのが研修テーマの目的ではなかったのか、というのが皆の思いだった。タイヤの設計技術などまったく理解していないのにすでにその道の専門家の意識になっていた。

 

ここを潮時と思い、用意してきた多変量解析の教科書のコピーをもとに主成分分析の説明をした。主成分分析を行うと集められたデータの集約ができ、各社の位置づけを知ることができる、M社が本当に一社だけぬきんでた存在であるか、ということも知ることができる、などと説明をしたら、体育会系の本能ですぐにやろうということになった。時間はすでに22時を過ぎていた。

 

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