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2014.12/08 非科学的問題解決事例-PENの巻き癖解消(4)

昨日の話を言い換えると、フィルムを熱処理するときに、熱処理のための雰囲気温度をどこで測定するのか、という問題となる。

 

大抵はフィルム近傍にセットされた熱電対(温度測定用のセンサー)の温度を雰囲気温度とし、それをフィルムの温度とする。これが間違いの始まりである。雰囲気温度が、仮に平衡状態で計測された値を示しているとしても、フィルムが平衡状態にあるかどうかは保証されていない。

 

説明を簡単にするために雰囲気は必ず平衡状態を維持しようと制御していると仮定する。そこへ温度が低いフィルムが入ってくると、雰囲気のエネルギーは温度の高い方から低い方へ流れるので、雰囲気はこの瞬間非平衡状態となり、フィルムへ与えたために失われたエネルギ-がどこからか供給されて、また平衡状態に戻るまで少し時間がかかる。

 

しかし、熱電対が示す温度はフィルムへ与えたエネルギーが小さいならば、熱電対自身が持っている比熱のため常に同じ温度を示し続ける。

 

一方フィルムでは、雰囲気からもらったエネルギーはまず表面の温度を上げることに使われるが、フィルム内部にその残りのエネルギーが伝わるまで表面状態と内部の状態が一致せず、エネルギー分布が不均一な非平衡状態となっており、仮に表面温度が雰囲気と同じになったとしてもフィルム内部の温度は低いままとなっている。

 

やがてフィルムは平衡状態になり、その中心部も雰囲気温度と同じになるためには、雰囲気が失ったエネルギーを取り戻し、同じ温度になる時間よりも長くかかる。すなわちフィルムが平衡状態になるのは時間がかかり、その時間は雰囲気温度の影響を受けるという複雑な問題となる。

 

この問題を科学的に解くことも可能だろうが、思考実験でこの様子を観察すれば一瞬に答えが出る。ヒューマンプロセスは科学的プロセスよりも効率が良いのである。ただ非科学的という理由でこのような効率の良い方法を使用しないのはもったいない。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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