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2015.01/02 KKD

昨日高純度SiCの合成に初めて成功した時の不思議な体験を書いた。STAP細胞はその再現が困難であったが、このSiCの合成はロバストの高い技術として完成し、現在もゴム会社で事業として継続されている。

 

無機高分子と有機高分子の均一混合について、高分子科学をご存じの方はSTAP細胞と同様の違和感を感じられるかもしれない。さらに、それから合成された炭化物前駆体の特殊な熱処理プロファイルが見つかったプロセスが神がかり的だったことは、実験に成功した本人もびっくりしているくらい科学から逸脱している。

 

iPS細胞の誕生もこの高純度SiCの成功に近いところがある。しかし両者共通しているのは、勘や運だけで成功しているのではなく、その実験に至る過程には綿密な戦略があり戦術遂行過程で遭遇した現象を大胆に受け入れている点である。

 

ゴム会社に入社した時先輩社員から、この会社は科学的なプロセスを踏まず勘(K)と経験(K)と度胸(D)で開発が進められる、と自嘲気味に教えられた。

 

ところで、科学が成立する前の時代に行われていた技術開発では、科学が存在しなかったので経験(K)の積み重ねが重要であったと「マッハ力学史」に書かれている。

 

だから経験を重視した技術開発は人間本来の営みだから自嘲気味になる必要は無い。経験が積み重ねられたある日にひらめきがあり実行したらうまくいった、この経験の積み重ねが科学成立以前の技術開発の方法、と同書に説明されているので、勘と度胸もマッハに認められた技術開発を成功させる重要な因子である。

 

ただ大切なことは、マッハ力学史に書かれた順番は、経験が先にあり経験の積み重ねられた結果ひらめき(勘)が生まれ、思い切って実行(度胸)して新技術を生み出しているという流れだ。

 

経験が次の世代に伝承されれば、経験の組み合わせを見直す動きも出てくるだろう。すなわち戦略を立ててKKDを実行した人物もいたはずである。ガリレオガリレイなどはその代表者かもしれないが、マッハ力学史にはここまで書かれていない。

 

勘が先行するKKDはいただけないが、経験を重視し、科学的に立案された戦略に基づくKKDの技術開発は、新しい科学のシーズを見つけるためのヒューマンプロセスである。

カテゴリー : 一般

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