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2015.01/18 混練プロセス(14)

低分子どおしでは混合だけで一応の分散を実現できるが、高分子は混合だけで物質の分散を行えないと考えたほうが良い。実は低分子どおしの場合でも適切な分散剤が必要だが、高分子では分散剤を添加しても低分子どおしの混合レベルを実現できない。

 

高分子を溶剤で希釈し2%以下の濃度で初めて混合だけで分散が可能になる。このような大切なことが教科書に書かれていない。いろいろな高分子の混錬を経験して初めてわかることであり科学的な表現ではないからだ。

 

教科書には冷静に考えると科学的にも奇妙に思われる分散混合と分配混合が高分子の混練プロセスの説明に出てくる。混練プロセスのモデル化を行うために考え出された説明かもしれないが高分子の混錬技術を開発する時に現象の素直な理解を阻害すると思う。

 

ガラス繊維のようなフィラーの分散を行っているときにはこのようなモデル化で問題にならない、と言う人がいるかもしれない。そしてそのような人は、高分子とフィラーとの組み合わせの問題を濡れの問題として扱う。

 

濡れの程度によりフィラーの分散が変化する、という説明が適合している場合もあるが、濡れだけで考えていると新しい混練プロセスのアイデアを考えようとしないでフィラーの表面処理や添加剤で問題解決しようとする。また本来は濡れなければいけないフィラーと高分子の組み合わせについて、濡れが悪い、と現象を誤って捉えるケースも出てくる。

 

10年近く前、大阪の中小企業が石臼式とよばれる特殊な混練機を持っているというので、PPS/ナイロン/カーボンの混錬試作をお願いした。そこのおやじさん(社長)は、勘でこの組み合わせは良いと思うのだがなぜかカーボンの咬み込みが悪い、と言いながら混練機の脇からこぼれてくるカーボンを掃除しながら練り上げてくれた。

 

二軸混練機よりも少しほどPPSのTgが下がり、分析結果からベルトを押し出す時に良い結果を期待したがだめだった。樹脂とカーボンの濡れが悪く、混練機の脇からこぼれていたカーボンのことを思い出した。勘では濡れなければいけない組み合わせなのになぜ濡れないのか?この疑問がカオス混合装置開発の動機の一つになった。

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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