活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2015.01/24 混練プロセス(19)

温度が強度因子であることを知らない人が多い。ただ一点の温度計測で全体の現象を捉えようとすると、大失敗をする可能性が高くなる問題の一つに混練プロセスがある。

 

強度因子とは何かを説明するために、高校で習うニュートン力学の大前提を書くと、対象とする物体が剛体であるということだ。剛体とは力が加わった時に変形をしない物体で力のロスも起きない架空の物体である。このように高校の物理で剛体を仮定するのは、そうでない場合に問題が難しくなるからだ。

 

ある物質に力を加えると多くの物質は微小変形する。ゆえに力を加えた点で計測された強度の値が、他の場所を計測した時に同じ値になるとは限らない。このような計測点が異なると値が変わる、あるいは一点の計測値がその系の全体を説明するわけではない因子のことを強度因子と言う。

 

温度は計測している系が平衡状態にある時に、その系を代表する値となる。しかし現実の系は完璧な平衡状態を作りだすことが難しいので一点の温度計測で得られた値がその系のエネルギーを示しているとは限らない。熱分析装置で装置によりデータが多少異なってくるのはこのためである。ゆえに熱分析装置を扱う時には必ず標準サンプルを測定して温度の誤差を確認してから計測することがのぞましい。

 

二軸混練機はいくつかのゾーンで構成され、各ゾーンに熱電対がセットされている。例えばL/Dが40程度の二軸混練機の場合には10ゾーン程度に分かれている。この各ゾーンの熱電対が示す温度を手掛かりにヒーターの温度を設定するのだが、温度が強度因子であること以前に、10本の熱電対の誤差を日々管理していない人もいる。少なくとも沸騰したお湯に10本の熱電対をつけてみて皆同じ値を示すかどうかはチェックして欲しい。

 

熱電対の管理が十分になされていても混練プロセスで計測される温度には注意する必要がある。熱電対の位置である。各ゾーン同じ位置にレイアウトされているから安心して計測できていると思ったら大間違いである。例えば送りゾーンとロータなどが設置されたゾーンではシリンダーの構造に加工が施されている二軸混練機も存在する。

 

すなわちシリンダーの肉厚が変わっているのだ。さらに二軸混練機の運転状態では非平衡の状態なのでそこで示されている温度は参考データとしての意味しかない。あくまで見かけの温度制御を行うためだけの温度計の役割でしかない。

 

シリンダーを加工し樹脂温度を直接計測できるようにして、最初から二軸混練機に設営されていた熱電対との温度比較をしたことがある。混練条件や混練物質により、その二本の熱電対の温度差は変化した。偶然同じ値を示した場合もあるのだ。すなわち各シリンダーに設営された熱電対はシリンダーの温度管理のためだけに有効であり、実際の樹脂温度変化を捉えていないということを認識するのは重要である。

カテゴリー : 高分子

pagetop