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2015.02/02 混練プロセス(28)教科書は正しいか?

PPS樹脂を用いた中間転写ベルトは、脆さを改善するために6ナイロンが添加されていた。それにもかかわらず、製品として見た時に改善効果はわずかである。しかし、6ナイロンを添加したことでパーコレーション転移の制御が難しくなり,何のために6ナイロンを添加したのかわからない状態だった。

 

前任者に聞くと、最初の添加目的はPPSの靱性を改善するために6ナイロンを添加した訳ではなく、6ナイロンにカーボンを結合して分散させて抵抗を安定化しようとした、とのこと。しかし、6ナイロンを添加したらベルトのMIT値(靱性の一つの指標)がPPS単体の3倍以上になった。抵抗安定化に効果は無かったが、そのまま検討を続けた。その結果、当初の目的が改善されなかったので、にっちもさっちもいかなくなった。

 

そして、採用可否判断まであと半年となったので、自分の手に負えなくなり当方へ仕事を依頼してきた。QMSの都合があるので、この処方のままゴールを実現してほしい、と難しいお願いをしてきた。周囲が成功しないだろうと悲観的になっている理由を理解できた。すなわち手の施しようのない、終了すべきテーマだったのである。

 

中間転写ベルトは、外部からコンパウンドを調達して押出工程の開発を中心に業務が進められていた。押出というのは、いってこいの世界だ、とゴム会社で習った。すなわち射出成型では金型の中で樹脂が固まるのでコンパウンドの問題を吸収できる余地が存在するが、押出技術はコンパウンドが金型を通り抜けるだけなので混練プロセスの影響が成形体にそのまま現れる、と言う意味だ。

 

すなわち、混練プロセスに注目すれば問題解決できる簡単なテーマだったのである。問題は外部のコンパウンドメーカーが名門企業だったので、誰もそのプロセスの間違いに気がつかなかったのだ。さっそく高度の技術があると言われた工場を見学したところ、教科書通りの混練プロセスで、評判にうそは無かった。

 

しかし、水を流し粘土鉱物を二軸混練機でナノ分散するような、とんでもない技術が公開されている時代である。教科書通りに二軸混練機を使うのは、もはや時代遅れである。また、生産性は悪いがウトラッキーが提案したようなアイデアもあり、二軸混練機のイノベーションを進めなければいけない時代である。

カテゴリー : 高分子

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