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2015.02/17 イノベーション(8)

イノベーションとは何か、と問われたときに、今は技術革新と答えないことにしている。「革新」という言葉の響きから従来技術の破壊的イメージを与えてしまうからだ。イノベーションをこのような狭い意味でとらえるとイノベーションを起こしにくい環境を創りだしてしまう。

 

従来技術にささやかな新機軸を打ち出しただけでもイノベーションと呼んでもいいのではないか。新機軸でなくてもよく、不易流行の言葉が示すように、それまで気がつかなかった共通コンセプトを改めて具現化してもそれはイノベーションと思っている。

 

イノベーションをこのようにとらえてみると、模倣によるイノベーションという方法も存在することに気がつく。もちろんまるっきりそのままコピーしたのではイノベーションにならない。ここでいう模倣とは、大半を模倣し少しだけスパイスを利かせるような模倣である。

 

酸化第二スズゾルとラテックスによる帯電防止層の技術は、特公昭35-6614の再現であり、すなわち模倣であるが、単なる模倣ではない。誰もが再現できなかった技術をパーコレーション転移のシミュレーションプログラムと新評価技術でロバストの高い製造プロセスを明らかにし、特許の実施例を誰でもできるようにしたのである。

 

このような技術は、その革新の程度が分かりにくい。しかし30年以上前の優れた技術でありながら活用されてこなかった原因を明確にすると「コロイドでは生じにくいパーコレーション転移を制御できるプロセシング技術」が開発されていなかったことに気がつく。

 

この場合はソフトウェア―の技術だったが、この考え方を応用してイオン導電性高分子を保護コロイドとしたラテックスで新たな帯電防止層を開発できた。古い技術をスパイスを利かせた模倣で新機軸の技術によみがえらせて、それを用いて異なる技術を生み出すことができたのだから一連の技術開発行為はイノベーションと呼んでもいいと思っている。

 

ちなみにイオン導電性高分子の保護コロイドを用いた帯電防止層は、酸化スズゾルを用いたそれよりも価格が安い。ただ現像処理後に両者の帯電防止性能に若干の差が存在する。現像処理前には明確になっていないイオン導電性と電子伝導性の差が現れるのだ。また透明性のレベルも酸化第二スズゾルを用いた帯電防止層のほうが高い。写真フィルムが生産されていた時には商品の要求品質に応じて使い分けられていた。

カテゴリー : 一般

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