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2015.03/17 イノベーション(36)素材メーカーの場合

東レの炭素繊維技術は、PAN繊維の技術シーズを基に発展し、スポーツ用品分野に大きなイノベーションをもたらした。1980年代はテニスラケットやゴルフシャフトへ炭素繊維の複合材料がどんどん応用されていった。
この意味で東レの炭素繊維技術は、企業が起こしたイノベーションの典型例として語られることが多い。しかしドラッカーのイノベーションの視点では、最も信頼性確実性の低いイノベーションの機会とされている。
技術者から見れば、東レの技術開発は王道をゆく、うらやましい姿をしているが、中小企業を含めた製造業の全てがお手本にできる例ではなく、むしろ確実性の低い真似すべきではない方法と言われる。
ドラッカーは、イノベーションの機会として業界や市場内部で生じた予期せぬことが見出された時に、イノベーションを起こす良い機会である、と述べている。これは東レが炭素繊維を上市した時に、繊維メーカーの多くが新しい炭素繊維の製造方法を開発し市場に出てきた現象でさらにその意味を学ぶことができる。

ゆえに、お手本にすべきは、カイノール繊維やピッチ系炭素繊維、その他無機繊維などを生み出した企業の姿勢である。予期せぬ現象が市場に起きたと判断し、開発を始めた姿勢がイノベーションを起こした姿勢である。
東レの炭素繊維技術は、その開発ストーリーではシーズ指向の開発であったと語られることが多い。マーケットニーズを把握して開発された技術ではなかったので、事業として成功するまで長い死の谷を歩くことになった。

 

その時の経営陣の対応など社外の技術者が見てうらやましい社内風土なので技術開発の模範事例として語られているし、当方もその姿勢にあこがれ高純度SiCの開発でイノベーションを狙ったが、6年間大変苦労した。

カテゴリー : 一般

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