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2015.04/06 実験のやり方(5)

界面活性剤については、O/W型もW/O型もHLB値でその特性が語られる。これは、親水基と疎水基のバランスでミセルはじめ界面活性剤の機能が決定ずけられているという科学的モデルを用いた解説である。しかし世の中の界面が関係する現象は複雑で、単純なモデルで説明できない現象や複雑怪奇な界面現象を制御できる製品も存在している。

 

例えば洗剤は科学が誕生する以前に開発されていた技術的成果である。技術では機能を実現しなければいけないので科学的真理が明らかであろうとなかろうと試行錯誤と言う方法で発展してきた。科学万能の時代に試行錯誤を軽蔑する人がいるが、科学的真理を前提とした試行錯誤が強力な問題解決法の一つであることを知らない人も多い。

 

セレンディピティ―なる言葉で特殊な能力のように表現されているが、科学教育を受けた人ならば誰でも発揮できる能力であり、それができないのは科学の知識が乏しいからだ。科学の知識については、その道の専門家に尋ねれば容易に獲得できるので、その知識の使い方さえ理解できれば誰でもそれを発揮できる。ただセレンディピティ―を発揮しようとすると体力が要求されるので若さは重要な資質だ。

 

ただ体力勝負だけでは、猿と人間の差別化ができないので多少の工夫をしたい。電気粘性流体の増粘の問題では、オイルに界面活性剤を入れて耐久試験を行い、その効果を見る、という実験が行われている。猿にはできない実験方法で科学的である。しかし、この方法では結果が出るまでに時間がかかるのである。

 

耐久試験を行い増粘した電気粘性流体に界面活性剤を添加して、粘度を改善できる界面活性剤を見つける、という実験を行えば、短期間に結果を出せる。増粘した電気粘性流体を大量に製造し、それを小瓶にとり、界面活性剤を添加して撹拌し、現象を観察する。界面活性剤を添加して現象を観察するだけならば、30分もあれば結果が出る。

 

実際の実験では、耐久試験を完了し、廃棄されていた電気粘性流体を利用した。それを300個ほどの試薬びんにいろんな界面活性剤とともに入れ、振とう機にのせて一晩撹拌しただけで、有効な界面活性剤を見出している。たった2日で1年かけた否定証明の実験をひっくり返している。

 

廃棄されていた電気粘性流体は、何が何だかわからない検体であり、このような同定不可能な状態のものを使用するのは科学的実験では嫌われる。しかしノイズが多い状態で見出された改良手段ならば、再現性が高くなると期待できる。実際には再現性だけでなく、性能も優れた界面活性剤を見つけているが、それは界面活性剤として市販されていなかった高分子である。

カテゴリー : 一般

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