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2015.04/16 科学の重要性(3)

30年前リアクティブブレンド技術を用いて半導体用高純度SiCの開発に成功した。無機高分子技術の黎明期であり、ゾルゲル法によるガラスの製造技術が研究されたりしていた。ポリマーのブレンド技術を用いた方法は世界初であった。フローリーハギンズの理論から無機高分子と有機高分子をブレンドすれば相分離することが科学的に明らかとされていたために誰も挑戦しなかったからだ。

 

実際にポリエチルシリケートとフェノール樹脂をブレンドすると、すぐに相分離する。ここへ酸あるいはアルカリ触媒を添加するのが味噌で、触媒の添加で両者のポリマーの反応が開始され、均一混合が実現する。

 

相分離するポリマーのシステムでもリアクティブブレンドであればポリマー間の相互作用が強いために相分離しなくなる。科学的にフローリーハギンズの理論から逃れる方法の一つである。その後この着想の影響かもしれないが、ππ相互作用を用いた有機高分子と無機高分子の均一化という研究が発表された。

 

科学的推論に基づくアイデアは、その論理のアナロジーから新しいアイデアを導き出すことを可能とする。だから科学の体系化は重要である。経験の体系化も有効に見えるが、真理が保証されている科学の体系ほどに汎用性は無い。ゆえに重要な経験知は必ず科学の視点で整理される必要がある。

 

スポーツ科学はこのような視点で飛躍的に発展し、科学的に管理された練習で記録も伸び続けている。最強の市民ランナーが注目されているが、これは努力と根性の賜物であって、市民ランナーがトップになったからと言って、スポーツ科学を否定する理由にはならない。

 

人類の肉体の可能性を明らかにするためにスポーツの科学は重要である。その科学が完成した時に豊かな老後を過ごすためのスポーツ科学がビジネスになっているだろう。スポーツの科学の面白い点は、その分野へ著名なアスリートが率先して参入している点である。

 

誰でも異分野ですぐに活躍できるのは、知識の標準化が可能な科学という哲学のおかげである。有機化学と無機化学という異なる分野でも科学のルールで知識が体系化されているので、異分野の研究者でも研究論文を読むことにより容易に研究をスタートできる。有機合成から無機合成へ専門を容易に転換できたのも科学を理解していたからだ。

カテゴリー : 一般

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