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2015.06/11 科学と技術(1)

昨日の(注)を書きながら、科学と技術について誤解されている人が多いのではないだろうか、と考えた。当方も新入社員研修で技術について学校教育で学んでいなかったことを初めて自覚した。実務についてから技術者という職業を考える毎日だった。指導社員はその手本として最高の人だった。

 

技術者の開発方法論を実務から学ぶことになったが、ゴム会社で高純度SiCの事業化を検討しているときの体験は学習として厳しいものだった。社長決裁のテーマだったのでつぶすためには、それなりの理由が必要で、一方継続するにも地獄であった。

 

当時のU本部長には厳しく鍛えられ、M研究所長にはやさしく癒やしていただいた。特にM研究所長については、瞬間湯沸かし器の異名が陰口として語られており、部下で叱られなかった人がいない、と言われていたが、当方は一度もそのような湯沸かし状態も見たことがなければ、叱られたこともなかった。いつでもよくがんばった、と褒められていた。気になったのは、いつも過去形だった点ぐらいである。

 

いつも褒められるときには過去形だったので、その後は新しいテーマを提案するようにしていた。するとM研究所長の回答は、「まだそれ、考えなくていいよ」か、あるいは、「すごいね、すぐにやりなさい」のいずれかだった。すなわち前者の回答の時には、「よくがんばった」は、過去形ではなく現在完了形の継続の意味だったのである。

 

M研究所長は、いつも親身に研究テーマを心配してくださっていた。U本部長とM研究所長の組織体制のままであったなら、転職するような事態になる事件が起きなかったと思う。55歳役職定年は研究組織の管理者にとって早すぎる年齢制度である。

 

U本部長は、大学の先輩でもあり、当方の性格をよくご存じだった。だから周囲が心配するほど辛辣な叱責が多かった。そして最後には、「まず、モノを持ってこい」が口癖だった。ところがM研究所長とは反対にU本部長は周囲の管理職から優しいと評判の方だった。また、日常はそのような紳士然とされた方だった。それだけにテーマ進捗の報告は、当方にとって地獄だった。

 

U本部長は厳しかったが、「モノを持って来い」という口癖に象徴されているように、技術重視のマネジメントであり、科学と技術について理解を深めるのには役だった。ちなみに「まず、モノを持って来い」は、当方だけでなく他の研究管理者も言われていたらしい。「本部長は手品のようにすぐモノができる、と考えている」という陰口がきかれた。

 

ただ、この陰口は間違っており、度重なる議論から知った本部長が意図していた意味は、機能の確認モデルが必要だ、という内容であった。たとえばこのようなことがあった。ECDの企画を説明しようとして秋葉原で液晶表示板を購入し、手作りでECDパネルを完成した。しかし、文字をうまく消すことができない。そのままテーマ提案の場で使用したところ、「すぐに文字が消えるように研究しろ」とテーマが認められた。

 

本部長が意図していたのはその程度で、企画内容で重要となる技術の機能についてどこまで真剣に考えていたかを知りたかっただけである。企画の説明資料に科学的内容をいくら書いてもだめで、重要なのは技術開発テーマ企画として技術の要となる機能が十分に検討されているかどうかである、と指導を受けた。

カテゴリー : 一般

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