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2015.07/16 技術者の能力(5)

度胸は技術者の能力として重要な能力かもしれない。おそらく単なる科学者が技術者になれるかどうかは、この度胸の有無かもしれないとさえ思っている。もし度胸が無いならならば、科学の研究者でとどまるのがよく、技術者を目指さない方が良い。ただし研究所ブームが去って30年、企業には研究者が生きてゆける場所は無い。科学で解明されていない現象からもうまく機能を拾い出せる度胸のある技術者が今求められている。

 

技術者は、商品開発の現場で二律背反という状況によく遭遇する。すりあわせの技術がマスコミで取り上げられたりしているが、すりあわせにも度胸が必要だ。ファーガソンは度胸についてことさら強調していなかったが、心眼で思い描いたことを実行に移すときには度胸が必要となるので、彼もその重要性を否定しないだろう。

 

くそ度胸は天性の素質かもしれないが、わずかばかりの度胸があれば、成功体験でそれを大きくすることが可能になる。思い切った開発を行うためには度胸が必要だ。仮に科学的に証明された現象から導き出された機能を活用するときでも、その機能が発揮される市場には、科学的なモデルから予想できないノイズが多量に存在する。技術開発では想定外のエラーがつきものなのである。

 

想定外のエラーは、想定して対策していても遭遇する非論理的な、きわめて技術特有の問題である。ゆえに二重三重の冗長性というヒューマンプロセスを理解する必要がある。おそらくこのヒューマンプロセスは、実務経験あるいは技術の伝承による仮想体験以外では鍛えられない能力ではないかと思っている。

 

市場でエラーが起きたときに担当者を叱ってみても仕方がないが、叱責は愛の鞭として重要で、さらにアメとして上司は自分の失敗体験を話してあげると良い。それにより冗長性の重要性が分かってくる。また、失敗体験を話すことで叱責が愛の鞭であることも理解でき、技術者は育つ。
 

カテゴリー : 一般

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