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2015.09/26 ステージゲート法の落とし穴

研究開発を管理する一手法としてステージゲート法は20年以上前に登場し、研究開発の各段階で関所を設けてチェックする類似の手法も含め多くの企業で普及している。研究開発から事業化までの間に関所を設けて事業化につながらない研究開発を早い段階で中止できるこの方法は、無駄な研究開発を早期に中断できるので一見合理的に見えるが落とし穴がある。
 
まず、技術開発のスピードアップが求められる現代において、ソフトウェアー開発で主流になりつつあるアジャイル開発とは異なるウオーターフォール式の技術開発になってしまう点だ。ただし、アジャイル開発の考え方を導入した変形手法は可能であり、これは工夫すれば良いので大きな欠点ではないかもしれない。
 
大きな問題は関所の役割をするゲートの運営である。この活動報告でも紹介したが、電子写真システム高級機の中間転写ベルトを押出成形で製造する技術開発では、デザインレビュー(DR)と呼ばれる関所が設けられていた。
 
しかし、PPSと6ナイロン、カーボンの3元系の配合がDRをすり抜けて最終段階の事業化まで残っていたのである。当方にとってはカオス混合技術を開発できるチャンスとなったのでラッキーな出来事であったが、もし当方がいなかったならば、このテーマはステージゲート法に似た研究管理を行いながらも大失敗となったテーマである。
 
なぜこのようなことになったのか。昨今はプレゼン技術が高度に進歩し、プレゼンテーション能力で関所をくぐり抜けることができるからである。10年前のことなので白状しても許されると思うが、カオス混合技術をテーマアップするときには、実用化までのプレゼンテーションのシナリオを事前に作成していた。
 
すなわちプラント立ち上げまでの戦略と戦術を事前に具体化し、提案したのである。これは弊社の研究開発必勝法の根幹である。技術開発テーマについては誰もが認める内容のテーマもあれば反対意見の多いテーマもある。ステージゲート法では、反対意見が強い場合にはゲートを通過できない。しかし、この反対意見というのはプレゼンテーションの工夫で弱めることが可能なのだ。
 
前任者も同様の工夫によりDRの関所を通過していた。仕事を引き継いだときの資料を見ればそれはすぐに分かった。技術の成功のために重要なエンジン部分の絵について願望をあたかも科学的に明らかな如く書いていたのである。
 
関所で議論するメンバーは誰もが特定分野の専門家とは限らない。仮に専門家がいたとしても、納得できるデータが揃えられていたらだまされてしまう。詳細は省略するが、科学で嘘をつくことが可能なのである。
 
真理は一つと信じられている科学で嘘をつけるか、という議論については昨年のSTAP細胞の騒動から世界のトップの研究者でも過ちを犯すことから想像していただきたい。実はステージゲート法の最も大きな落とし穴はこの点である。これを回避するにはアジャイル開発と同様の「まずモノをもってこい」手法による技術開発がある。詳細は弊社にご相談ください。

カテゴリー : 一般

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