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2015.11/02 旭化成子会社の杭打ちの問題

杭打データ改竄問題は、泥沼の様相を呈してきた。すなわち、杭打ちに失敗したらデータをごまかすことが常態化していた、と新聞に書かれていたからだ。そして横浜のマンション以外にもデータを改竄していた建築が見つかった。
 
ゴム会社と写真会社の二つのメーカーに勤務してきた経験から、現場のマインドは会社の風土により形成されると思っている。この体験から、今回の事件について最も恐ろしいシナリオは、杭打問題以外にも、と想像が膨らんでゆくが、建築業界に詳しくないため現場のあるべき姿について述べる。
 
そもそも日本の製造業の成功は、トヨタ看板方式等で世界的に有名になった「カイゼン」という言葉が示すような、現場力にあった。これは、日々少しでも品質向上を図るためにQCサークルで、現場を少しでも良くしようとする活動から生まれる力である。
 
そこではデータを改竄しようという発想は出てこない。生データは、カイゼンのための重要な情報の一つであり、データ取得に失敗したら必ず取り直すのが決まりごとになっているからだ。むしろデータ改竄は現場で仕事をする人たちの首を絞める事態になるので絶対にしない。日本の健全なメーカーの現場とはそのようなものだ。
 
新聞には工期に追われて改竄する以外に道が無かった、と書かれているが、それが本当ならば、現場で改善活動が機能していなかったことになる。旭化成は、化学メーカーでありながら、へーベルハウスという商品を販売し、化成品の販売チャネルまで自社で構築することにより、効率的な事業展開を行い、斜陽化した繊維事業を立て直した日本の伝説的なメーカーである。
 
すなわち化学という強みを活かして事業再生に成功した、日本を代表する化学メーカーの一つである。日本のQC活動も繊維事業で十分に学んできたはずだ。しかし事業を転換する時に、メーカーにとって大切な現場を軽視するミスを行った可能性がある。
 
技術を重視するゴム会社では、現場現物主義が今でも徹底しているが、科学を重視していた写真会社は、やや現場軽視の傾向があった。またそのような風土だったので、電子写真機の製造現場をすべて中国に移す大胆な経営も可能となり、中国の安価な人件費の恩恵を過去に享受することができた。しかし、今、人件費の高騰で過去のメリットと、日本の大切な製造現場も無くなった。
 
新たに開発された技術を安定に商品へ転写する作業が現場で行われているので、優れた品質を造り込むためには、現場力が重要である。すなわち、開発部隊がいくら優秀でも現場力が弱ければ高い品質の製品を消費者に供給できない。現場力が弱くなったメーカーで何が起きるのか、ご心配な方は弊社へご相談ください。
 

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