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2015.12/02 シャープの将来

産業革新機構がシャープの再建に乗り出すという。シャープの不振は液晶事業が価格競争に巻き込まれにっちもさっちもいかなくなったのが原因である。亀山ブランドが世界のブランドとして君臨したのはほんのわずかな期間であり、会社自体が風前のともしび状態になってしまった。
 
液晶事業はじめデジタル機器のコモディティー化は急速に進んだ。原因がいろいろ書かれているが、やはり形式知である科学の成果である点が問題だと思っている。すなわち、今の時代において、科学的知識はインターネットで容易に入手可能で旧来の生産資本である人、モノ(土地その他)、金を揃えれば、そこそこの人材でも事業ができてしまうのである。
 
産業機器展に行けば、液晶ディスプレーの生産装置は一通りそろえられる状況である。おまけにパネル一枚の生産は、すべて自動化可能で、タイヤ生産のような熟練工を必要としない。すなわち、すべて自動化可能なハイテクは、労働集約的なローテクよりもコモディティー化しやすい。
 
ただ、産業構造をよく見ると液晶ディスプレーの材料や部材を生産している企業は堅調である。すなわち、液晶事業と言っても材料や部材を組み合わせて単なる組み立てを行っているメーカーが、コモディティー化の結果事業継続が難しくなった、という状況である。
 
面白いのは自動車産業で、同じような組み立て事業でありながら、トヨタのように利益率を高くしている企業の存在だ。自動車の場合、エンジンを低コストで生産する技術は、その設計技術から組み立てまでが大変難しいと言われている。また自動車工場を見学すればすぐに理解できるが、自動化は行われているがラインには人が張り付いている。
 
また、トヨタ生産方式として有名となった看板方式はじめ、生産ラインの改善活動が品質の安定化に寄与しているような、未だにヒューマンプロセスが生きている現場である。電気自動車になれば、モーターの生産は簡単なので急速に自動車産業もコモディティー化が進む、と言われてはいるが、自動車と言う機械はアナログ的であり、高級車や運転して本当に楽しい車という製品をレゴのように単純組立産業化するのは難しいと思われる。
 
例えば、デザインや乗り味などの感性という要素の占める割合は大きく、この部分ばかりは非科学的要素として残る。おそらく21世紀のメーカーは、その生産要素にヒューマンプロセスの部分が多い製品でない限り生き残れないのではないか。形式知だけで完成できる製品は、情報化時代においてコモディティー化しやすく、その事業の存続はは日本において難しくなると思われる。
 

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