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2016.01/12 21世紀の開発プロセス(1)

ゴム会社では異色な事業であり、その心臓部分となっている高純度SiCの原料(前駆体)高分子の開発プロセスを思い出しながら9回にわたり書いてみた。30年以上前の話ではあるが、この事業化では人生を左右する事件もあり、今でも当時の出来事を鮮明に思い出す。
 
昨日書いたように、当方も研究者として科学100%の開発プロセスが大好きである。真理をめざし徹底的にそれにこだわる理由は、真理を見出した時の感動が大きくなるからだ。だから、STAP細胞はじめ捏造をする研究者が増えてきている状況を当方は理解できない。
 
自然界の真理は、可能な限り美しく取り出すことが研究者の最大の喜びのはずで、そのように取り出された真理で科学の体系は作られなければいけない。
 
昨日紹介した高性能超高温熱天秤については、熱分析装置を事業にしている某メーカーに依頼したが、性能未達のまま納入された。当方の提案した設計では性能を出せない、というのがメーカーの担当者の言い分だった。
 
納入された装置を点検したところ、提案した以外の工夫は何もされていなかった。ところが、未完成の機械が納入されてわずかな改良で基本的な機能は、当初予定していた仕様に到達した。すなわち試料部分が2000℃まで1分以下で加熱される熱天秤が完成したのだ。
 
某メーカーで、なぜ完成できなかったのか不思議だった。装置開発の担当者に尋ねたところ、仕様書に基づき開発をしていたという。彼によれば、当方の改良したところは、仕様書に書かれていなかったので見積もり外だという。
 
そのメーカーとは共同開発契約を結んでいたが、依頼した以上のことをやらない方針だったようだ。しかし、TGAの部品代は1000万円もかかっていない。文句の二つ三つ言いたかったが、とにかく研究に使用可能な熱天秤が完成したので、その後は細かいところを自分で改良しながら研究を進めた。
 
科学の先端で真理を追究しようとするときに、評価装置は重要である。時にはこの熱天秤のように自前で開発しなければいけない状況になる。高純度SiCの開発では、品質管理のためにもこの天秤が必要だったので投資を惜しまなかったが、とにかく先端の科学の領域で科学に忠実に研究開発を進めようとするときには、評価設備への投資が膨らむものである。
 
投資を抑え科学を追求する研究開発を心がけるならば、産学連携がよい、という人がいたが、今時アカデミアも大変なのである。また国のプロジェクトでもマッチングファンドシステムで企業にいくらかの負担を要求してくる。それでも先端の科学の領域で研究開発をしなければいけないと考えるメーカーは、産学連携も含め他の組織とのコラボレーションにより投資を抑える工夫が必要になる。今時先端の科学領域で金がかからない研究開発など不可能な時代である。一方でお金をかけたなら成果が出るのかというと、STAP細胞で1億4500万円かかった、という事例を思い出して欲しい。
 

  

カテゴリー : 一般

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