活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2016.02/01 「あの日」を読んで(3)

この本を購入して真っ先に読んだのは、「第12章、仕組まれたES細胞混入ストーリー」である。この一章を読むだけでこの本の価値が決まる、と考えたからだ。しかし、一番大切なことが何も書かれていないのである。
 
STAP細胞で作られたとするネズミが、実はES細胞で作られたインチキだった、というのが公知情報であるが、その真相は書かれず、誰がどうの、彼がこうの、という話に終始し、結局ES細胞混入の真偽は不明と結論されているのだ(補足)。彼女が真偽は不明と書いたなら、誰も真相はわからない。ES細胞盗難事件を受理した警察ではどのように扱うのだろう。
 
少なくとも、「私がインチキをしました」とは書かないだろうと想像しながら、混入させた犯人は、とドキドキしながら読み進んだら、真偽は不明となっており、がっくりきたのである。STAP細胞騒動に関心のあった人ならば、誰もが興味を持っていた事件なので、この部分で真相を明らかにしなければならないはずだ。このことから、発売されるや否やこの本を購入したことを後悔した。
 
さらに、あたかも彼女を罠にかけたように書かれているが、彼女を罠にかけようとしたかは不要で、重要なのは先に書いたようにネズミがSTAP細胞由来ではないインチキだったかどうかの一点である。この大事な疑問に対して、せめて真偽の結論だけでも推定でよいから書いてほしかった(誰かの管理の問題では答になっていない)。
 
この本の出版について、講談社は、彼女の手記に手を加えず原文のまま出版したという。果たしてそれは正解だったろうか?全体はまさに暴露本というよりも、書きたい放題の悪書である。この本に実名で書かれた人たちは迷惑しているに違いない。少なくとも大手出版社ならば、著者にアドバイスをしても良かったのでは、と思われる部分が多い。
 
もし著者の知名度や事件の大きさから、手をかけなくても売れるだろうと出版社が安直に考えてそのまま出版したとしたら大きな問題である。講談社ならば書籍の果たすべき社会的役割を考えて出版して欲しかった。いったいこの書籍から読者は何を読み取ればよいのだろうか。
 
当方も自由にこの活動報告を書いているが、少なくとも若い読者へ、若い技術者に実践知と暗黙知を伝えたい一心で書いている。人生には美しい部分(注)もあれば、醜い部分もある。醜い部分については、自分の恥とも思われる体験も書いている。若い人に少しでも失敗を避けていただきたいからである。
 
(補足)探偵小説でも映画でも最後のシーンを話すことは御法度である。若いときに職場で見てきた映画の話をして、よくひんしゅくを買ったが、「あの日」という本では、最後の結末がよく分からない本なので何を書いても大丈夫だろうと思っている。よく分からないのは当方の頭が悪いせいかもしれないが、読後感として「よくわからんなー」というのが感想である。田崎つくるの巡礼の旅は、最後のシーンでそのストーリーがよく分かったが---。
http://wamoga.blog.fc2.com/blog-entry-109.html
には、読後感として一つの仮説が述べられている。当方の頭が少しすっきりしたので紹介しました。著者もこのブログのように書いてくれるとありがたかった。このブログによると、当方は第三者による偽装にまんまと騙されていたことになる。このブログの仮説が真ならば、この「STAP細胞」事件は、まだまだ続くと思われる。しかし、一般の人にこのブログのように理解せよ、と言うには少し無理がある。STAP細胞の存在を信じている当方でさえ、第三者の偽装を真と信じていたのである。ゆえに書かれている内容と自分の理解に矛盾があり、頭の中に雲状態だった。ただし、本当に偽装だったなら、この第三者は科学者として失格である。また、現在訴えられているES細胞盗難事件の裁判は、前代未聞の科学裁判になる可能性があり、科学とはなんぞやというカラマーゾフの兄弟のような小説が生まれそうな気がする。
(注)高純度SiCの発明にまつわるとっておきの美しい話がいくつかあるが、まだそれは公開していない。あまりにも美しすぎる話だからである。聖人と呼びたくなる人物が関わっており、人生のどん底状態で、突然風の便りをくださったりして精神的に助けていただいている。人生に一人でもこのような方がおられると、思い切ったチャレンジが可能となる。

カテゴリー : 一般

pagetop