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2016.02/02 「働く意味」について

「あの日」を読んで最も気になったのは、理研の研究者も知識労働者であることを著者は理解していたのだろうか、という点である。しかも国民の税金から給与が支払われているエリート労働者であることを。
 
文章から自己実現意欲は理解できたが、「働くこと」のもう一つの意味である貢献については、読者である当方にはあまり伝わってこなかった。また、自己実現にしてもそのための努力を正しく行っているかどうか、不安になった。
 
貢献と自己実現が知識労働者の働く意味であると言ったのはドラッカーだが、今や常識になっている。企業の就職面接では、この視点からの質問が必ず出される。しかし、ドクターコースまで学んだ著者の本からそれらが正しく伝わってこないのは、大学までの教育で学んでこなかったのかもしれない。
 
もっとも、当方が「働く意味」を知ったのはドラッカーの著書からであり、誰かに教えてもらったわけでもない。また、サラリーマンを卒業して日々この言葉を意識し働くことも無くなった。常識として、自然に貢献と自己実現に努力している。
 
この「働く意味」は、組織人として悩んだ時に問題解決で便利なことが多い。特に貢献については、そのベクトルを正しく位置づけることにより、悩みの解決が可能になる。また、かつて実施した部下のコーチングではヒントを考える時に、この言葉が重宝した。
 
もし「あの日」が働く意味をよく理解して書かれた本だったならば、もう少し面白い本になったかもしれない。また、著者しか知らない真相で書かなければならないことも明確にされたと思われる。研究者になりたい意欲は十分に伝わったが、その為に行った努力や、研究者としての貢献の方向が著書を読んで伝わってこなかった。
 
エリート研究者であった著者が「働く意味」を理解していないのなら、多くの大学生もその可能性が高い。大学教育で科学者の倫理も指導していると言われているが、「働く意味」についても正しく理解できるように指導する必要があるのではないか。
 
<補足>日々仕事が決まっている人でも「貢献」と「自己実現」の観点で仕事を見直す習慣をつけておくと良い。また役職者でも、「貢献」を軸に仕事を考える習慣を実践すべきである。とかく権限に目が奪われるが、権限から仕事を定義すると成果が小さくなる。技術職の管理者は、部下のスキル不足を補うことも大切な仕事であるが、指導育成と称して叱咤激励ばかりしている人がいる。時には「やって見せる」ことも重要な仕事である。以前中間転写ベルトの開発で、「素人はだまっとれ」とコンパウンドメーカーの営業担当から言われ、テーマの失敗を確信した時、自らコンパウンド工場を建設することを決意した。この時どのような貢献の仕方が最良であるか考える余地は無かった。業務を正しく理解している人、あるいは問題を正しく捉えている人は、当方しかいなかった。また組織内外の調整時間も無かった。短期間に業務を成功に導くためには、自らが動き、現場で肉体作業までやらねばならなかった。貢献を考える時に、地位や権限を中心にするとこのような決断ができない。また、最もわかりやすい貢献は直接の成果を上げることである。直接の成果を上げられない組織は、やがて整理される。価値を高める方法や人材育成も組織の欠かせない貢献方法であるが、直接の成果は特に重要である。
 

カテゴリー : 一般

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