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2016.04/01 備忘録:スピノーダル分解(2)

金属やセラミックスにおける結晶成長や相分離は核を中心に進行する。単一材料のアモルファスから結晶成長する場合には、問題とならないが、二成分以上の多成分系になってくると核の存在を仮定しにくい相分離を考えなくてはいけない現象が出てきた。
 
すなわち各成分の局部的な濃度の不均一がもとで相分離が進行してゆくのがスピノーダル分解と呼ばれるものである。このようにとらえると、スピノーダル分解の様子を頭の中に描きやすくなる。
 
金属材料では、原子の拡散が問題になるが、高分子では炭素原子がつながり一本の紐のような状態になっているので、このスピノーダル分解の様子を頭に描くのは少し楽しい。試しに二種類の相溶した高分子がスピノーダル分解する様子を頭に浮かべてみてほしい。
 
イメージがわきにくい人は黄色と黒の組みひもが混ざった様子を思い浮かべ、それが黒色と黄色の二つの相にわかれてゆく映像を描けばよい。それがスピノーダル分解である。
 
このような映像を思い浮かべるとスピノーダル分解では速度が問題になることが思いつく。そして金属やセラミックスよりも高分子は速度が遅いかもしれない、という想像ができる。実際に高分子のスピノーダル分解速度は目視できるぐらいに遅いものも存在する(もちろんその速度は温度に大きく影響を受ける)。
 
PPSと6ナイロンをカオス混合で相溶させることに成功した。6ナイロン以外に様々なナイロンを試してみたら、予想されたことだが、χに相関してスピノーダル分解速度が変化していた。面白いのは、この2元系にカーボンを分散すると、スピノーダル分解速度に相関してカーボンの凝集粒子の大きさが変化するのだ。
 
高温度で一度相溶状態になっているものを急冷してベルトを製造するのだが、その冷却までの時間が一定でも、わずかに生じるスピノーダル分解に速度差があるのでそれが凝集粒子の大きさに影響していた。本日はエープリルフールだがこの現象は真実である。
 
ついでにもっと凄いことを書くと、PPSと6ナイロンをカオス混合で相容させて急冷した透明なストランドを室温で放置しておいたら6年ほどで不透明になったのだ。Tg未満の室温でゆっくりとスピノーダル分解が進行した証拠である。
 
この速度はPVAの結晶化速度のおよそ1/6以下である。障子の張り替えをやられている方はご存じと思うが、障子を買うとおまけで付いてくるのりはPVAが多い。PVAののりで貼り付けて1年後はがすときに、希に球晶を観察することが出来る。この球晶は、一年間のいつ出来たのか不明だが。
   

カテゴリー : 高分子

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