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2016.08/08 観察は、科学者専用の行為か(8)

電気炉の暴走については、無機材研で問題になった。納入されたばかりの電気炉だったからである。しかし、温度コントローラーの設定や電気炉の運転は、無機材研のT先生がすべてやられた。小生はただ眺めていただけである。
 
だから、当方の実験はうまくいったが、安全の問題でT先生にご迷惑をおかけすることになった。電気炉の暴走原因を解明しなければいけないという指示が出たのだ。
 
T先生からいろいろと状況について説明を求められたが、あいにくとその時観察していたのは、電気炉の温度だけだった。電気炉の温度が1600℃になって加熱が止まるのか、と思っていたら、1650℃まで上昇したので慌ててT先生に電話をした。
 
T先生はPIDの設定が合っていないのでしょう、と言われた。そのまま温度コントローラーを眺めていたら、1700℃になっても昇温の止まる気配が無い。プログラム通り次のイベントに移らず、あきらかに暴走していたような状態だった。
 
再度電話をしたら、非常停止ボタンを押してください、と言われたので非常停止をおしたところ、温度コントローラーも止まり、計測されていた温度は1800℃から徐々に下がっている状態となった。ところがコントローラーの制御は不思議なことに1600℃保持のイベントに正常に移っていた。
 
T先生が実験室に来られて、温度コントローラーをご覧になり、あれ正常じゃない、と言われたが、レコーダーの温度記録を見ていただいて、電気炉が暴走していたことを納得していただけた。再度スイッチをいれたら、ちょうど電気炉の温度は1600℃までさがっていたため、温度コントローラーのプログラムに軟着陸した。
 
後日いろいろ焼成条件を変えた実験を行いながら電気炉の具合を確認したが、この時の現象は再現されなかった。結局温度コントローラーの不具合点は見つからず、初めて電気炉が運転されたときの暴走は、原因不明として報告された。
 
しかし、不思議な現象はこの熱暴走だけではなかった。前駆体炭化物の処理条件をいろいろ変えても、熱暴走したときに得られた真っ黄色の粉体は得られなかった。カーボンがわずかに残り、少しくすんだ色の粉体として得られていた(注)。
 
この時の焼成条件がベストだったのは不思議な出来事であり、極めて非科学的である。電気炉の温度変化を観察し続け、異常を察知して電話をしたら、研究者の経験で異常でないという最初の判断が出され、結局二度目の電話で非常停止をかけることになった。それがベストな条件となったのだが、これらの行動は、すべて想定外のことである。
 
(注)シリカ還元法において、SiC化の反応は、熱力学的には1500℃以上で起きる。ゆえに1600℃前後では確実に反応が進行している。また、この温度領域では、SiOガスも発生する可能性があり、化学量論的に考察すると反応終了後Si不足となり炭素が少し過剰に残ることになる。前駆体を1800℃前後の温度条件におくと、わずかにSiOガスが生成してもすぐにSiC化するためSi不足にならず真っ黄色の粉体が得られた、と推定される。すなわち、分子レベルで均一にCとSiO2が混合された状態でもSiC化の温度条件を選んでやらないと反応に不均一なところができSiOガスが発生する可能性がある。

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