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2017.05/05 科学の問題(9)

電気粘性流体の増粘問題解決をお手伝いすることになった時に、過去の報告書や科学文献を機密書類だからという理由で見せていただけなかった。すでに世間で係長に相当する職位になっていた当方に、それはないだろう、と思ったが、貢献が働く意味なのでお手伝い業務を快く引き受けた。

 

当方の仕事は、オイルでブリードアウトしないゴムの開発なので電気粘性流体の情報が無くても考えられるだろう、と言われた。ただ、今から思えばこれが良かった、と思っている。業務に必要な科学的情報が全くない中で、目の前に起きている現象をそのままとらえることができたからだ。

 

増粘したオイルを1kgだけ欲しい、とお願いしたら、ごみとして処分される流体を全部もってけ、となった。増粘したオイルが大量にいただけたので、手当たり次第に界面活性効果のありそうな物質とそれらを組み合わせて一晩放置する試行錯誤実験を行った。

 

科学は時として問題解決を遅らせる。また、否定証明に走れば問題解決ができないということを科学的に証明して終わるので、問題解決そのものを科学による問題解決プロセスが問題解決そのものを不可能にする場合もある。

 

当方に依頼される前の一年かけたプロジェクトでは、電気粘性流体の増粘問題を増粘の原因物質の解析業務から始めていた。そして界面活性剤のHLB値が変わるとそれらの物質が電気粘性流体とどのような相互作用をおこすのか、科学的な解析と推論により解決策を探るという科学的問題解決プロセスで進められた。

 

その結果、すべてのHLB値で増粘を防ぐ解は存在しないという結論が膨大な解析データに支えられて、一つの真理として導き出された。そして、界面活性剤を電気粘性流体に添加しても問題解決できないという結論が「科学的に」導き出されていた。

 

転職する直前に報告書を見せていただいたが、科学的に完璧な否定証明論文だった。だから界面活性剤ではなく別の名前で呼ばなければ科学的につじつまを合わせることができないので、問題解決できた界面活性剤を第三成分と呼ぶようにしたようだ。

 

科学のプロセスで否定証明の結論を導き出したのは、当時の研究所の風土では避けられないことだった。つい最近では理化学研究所でスタップ細胞が存在しない、という否定証明が行われている。科学こそすべて、という風土では否定証明が優れた成果として評価されたりする。

 

 

カテゴリー : 一般

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