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2017.08/25 技術開発の方法(3)

科学という形式知の重要性を誰も否定できない。企業で技術の伝承を行うときに最も効率よく確実に伝承したいときには、科学という形式知で伝承する。また教育分野で、科学は必ず指導しなければいけない形式知である。

 

だからといって、技術開発を科学一色で進めるのがよい方法とは言えない。ましてや非科学的方法を排除するようなマネジメントも控えるべきである。技術開発では、経験知や暗黙知も科学同様に使いこなすべきである。

 

大企業では、研究開発をステージ・ゲート法あるいはその類似手法で進めている場合が多い。その時、研究開発の進捗は科学の視点で評価される。科学の視点で評価を受けるためには、データは科学的検証に耐えうるものでなければならない。

 

これが研究開発に悪影響を与えることがある。30年以上前に聞いたゴム会社の研究所の伝説(悪い事例)として、理論に即したグラフが得られるまで実験をやらされた、という話がある。

 

ゴムの力学物性は大きくばらつく。ゴムの架橋密度について40年前は科学でも盛んに議論されていたテーマだった。力学物性と架橋密度との相関は知られており、理論式も提示されていた。

 

しかし、ゴムは実用化される場合にフィラーが必ず添加される。ところがフィラーの分散はプロセス依存性があるだけでなく、プロセスを経た後のハンドリングの影響も現れる。

 

その結果、架橋密度の影響がうまく力学物性に現れないというケースも出てくる。あるいはフィラーの影響で大きくなったばらつきの中に隠れることもある。

 

だから架橋密度と力学物性の間にきれいな相関が現れなくても、偏差を考慮すれば理論にあっていそうだと思われるならば、その技術は合格としてもよいところを、理論通りのきれいなグラフが得られるまで実験を繰り返すような愚が行われた、という。

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