2017.10/10 アドバルーン
世論調査の推移を見ると希望の党の失速が目立つ。また、選挙が近くなっても無党派層の動きが鈍い。ニュースでは早くも投票行動の予測が行われており、自民党が過半数を割ることが無い、というのが大勢である。
何が問題なのか分析してもしかたがない。小池氏の仕事のやり方の特徴とその結果だからだ。すなわちアドバルーンを挙げて、そこへ勢いよく調子の良い流れができれば成功するが、流れができなければそれで終わりである。全体の戦略が悪く、これでは「小池ブランド」が低下するだけだろう。
豊洲問題は、恐らくお金を湯水のように使い解決する以外に結果が見えない状況だが、これは、豊洲移転を決めた経緯を考慮すると小池氏の責任だけではない。ただし、この仕事で小池氏の成果を評価するときに、この問題に投入するお金の額がその尺度となり、小池氏の責任が問われることになるだろう。
豊洲移転にSTOPをかけたのは良いアドバルーンに見えたが、戦術だけ立てて戦略がないような仕事の進め方である。日程も含め全体戦略を考えたときに、成果が見えにくくなるかもしれないが、今から思えば、そのまま移転を進めながらの解決方法もあった。
企業における技術開発の実務でもアドバルーンをあげることが重要と言う人がいる。一方でまずその前にモノを持って来い、という役員もゴム会社には、いた。当方は後者のマネジメントが正しいと思っている。ただ、前者のスタイルが共存する組織環境では、どうしても派手なアドバル-ンを挙げた人が評価されてしまう。
だから、小池氏のようにまずアドバルーンを挙げ、さらにその方向へどんどん人を追い込むスタイルのマネジメントをとる「賢者」が後をたたない。どんどん人を追い込めば、知恵者を獲得できるからである。
希望の党の誕生で一瞬世論は動いた。しかし、その先に具体的な希望が見えなかった。ゆえに浮動票の層は、浮動票のままになった。ここで小池氏がどのような一手を打ち、浮動票を希望の党に導くのか興味深い。
もしこのまま自民党の議席が過半数を割ることが無く希望の党の躍進が無ければ、アドバルーンを得意とする人は、この選挙をもとにその仕事のやり方を見直して欲しい。そしてゴールを実現するアイデアを自ら持たずにアドバルーンを挙げる仕事のやり方が如何に無責任な仕事のやり方であるのか反省してほしい。
リーダーになる人は、アドバルーンを挙げる前に仕事のゴールを実現できる見通しとそれを自らやり遂げる覚悟をしていただきたい。アドバルーンを挙げておきながらうまくゆかないと逃げてしまうリーダーが如何に多いか。今回の選挙では希望の党が過半数を取ることが無いという事前見通しが得られたので小池氏の立候補は絶対にないだろう。
小池氏の問題は具体的なゴールである日本社会の未来の姿とそれを実現する方法が示されていないところにある。戦後レジームからの脱却を唱える安倍政権に対し、しがらみからの解放を訴えているのだが、大同小異で自民党との差異が見えにくいだけでなく、マニフェストで作り出される未来が具体的に描かれていない。
国政では無いが、結果の見えている豊洲問題に至っては、来年のこの問題に対する予算が膨らむことだけがアドバルーンの成果である。民主主義ゆえの負担額増と言ってしまえばそれまでだが、STOPを駆けるときに予算が膨らまない方法を考えておくべきだったと思う。それが誠実で真摯な仕事のやり方であり、そのような進め方をするのが正しいリーダーである。
当方がPPS・6ナイロンの中間転写ベルトの開発を担当したときに、外部のコンパウンダーから既存技術で製造されたコンパウンドを購入して開発を進めてもゴールに絶対に到達しない、と経験知から判断した。
しかし、科学という形式知でコンパウンダーが開発を進める以上それを中断して、基盤技術も無く世の中に存在しない経験知に基づくカオス混合技術を開発するというアドバルーンを挙げるようなことはしなかった。
ただ粛々と土日を使い研究を進め、平日は中途入社で採用した若者と現場で遊んでいた退職前の職人をメンバーにしたチームで開発を行った。そして、失敗するであろう従来通りの業務を継続可能とした(なぜSTOPをかけなかったのか、その理由はまさにこれまで推進してきた多くの方に対する忖度である。)。
アドバルーンを挙げてなかったので、当初の中間転写ベルト開発計画通りにゴールへ到達しても高い評価は得られず、単身赴任が東京勤務となっただけである。
そのかわり、自分で十分なアイデアも無く実現できなかったであろう企画で最初にアドバルーンを挙げた人は出世した。アドバルーンをとにかく挙げたがる人は、このような現実をよく知っている「賢者」である。政治家は賢者よりも誠実で真摯な人材を選びたい。
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