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2018.02/02 パチンコとゼロックス

パチンコ業界は縮小し続けている。今回は出玉規制で倒産する店がすでに40店舗を超えたという。数年前ご近所のパチンコ店が2店舗ほど消えたと思ったら、1件大型店が登場した。しかし、中をのぞくと閑古鳥が鳴いている。

 

パチンコは戦後名古屋で生まれた。創業者の正村の名を冠したパチンコ店が西区にあり、豊川へ単身赴任していた10年ほど前まで正村ビル3階に博物館が開設されていた。名古屋の産業観光の目玉になるのかと期待していたら、資金難で閉鎖されたままだ。

 

パチンコ業界の心配をしていたら、富士フイルムホールディングス(HD)は31日、子会社の富士ゼロックスと米事務機器大手ゼロックスを経営統合させたうえで買収する、というニュースを見つけた。

 

球体のトナーを静電気で操作して情報を紙に表示する技術は、ゼロックスで発明され、当初ゼロックスは複写機の代名詞だった。少なくとも当方が学生時代までは、高価な複写機は、U-BIXもゼロックスと呼ばれていた。

 

輪講の資料作りは、例の臭い青色コピーが使われた。A4一枚当たり二倍ほど値段が違うからゼロックスは使うな、と言われた。研究室には複写機が二台あり、一台は臭い複写機で、もう一台にはU-BIXと書かれていた。間違えてそれを使用したら叱られた。

 

U-BIXと書かれていてもゼロックスと呼ばれていたのだから、ゼロックスの影響力はパチンコの正村以上である。名古屋人であれば、パチンコは正村の発明であることを皆知っているが、名古屋を一歩出ればパチンコが趣味だという人でも正村の名前を知らない。

 

当方が上京した時、パチンコは郊外の大型店が発展している最中だった。いわゆるデジモノが登場し始めた時代である。フィーバーが登場した時には、バブルと重なり日本中フィーバー状態だった。当方はセラミックスフィーバーに夢中でいつの間にかパチンコとは疎遠になった。

 

パチンコ玉もトナーも球体であるが、その大きさは異なる。パチンコ玉は、天4ピンにはじかれ、なかなかヤクモノに球がはいらないが、トナーは器用に99%近く静電気で描かれた情報通りの場所に鎮座し、紙にそれが転写されその後加熱されて画像となる。

 

ハジキと呼ばれる汚れは1%以下である。パチンコ玉とは正反対の挙動だ。これはハジキを少なくしようと技術開発を進めた結果である。パチンコはいくらスキルを上げても大半の球は天4ピンに弾き飛ばされる。

 

だからトナーで情報が美しく描かれるという現実を見たらそこに努力した技術者たちの汗を思い浮かべるとともに、ゼロックス社の発想に感動しなければいけない。当方は学生時代に見たU-BIXの汚れた画像が、転職した時にゼロックスよりも美しい画像になっていたのを見て、複写機をゼロックスと呼ばなくなった。

 

努力が進歩として結果に表れないと飽きてくる。レーザープリンターの画質は著しく向上したが、パチンコで生計を立てているという人を知らない。技術開発には飽きは無いが、パチンコには飽きる人も多いと思う。

 

しかしゼロックス社が複写機を世に送り出した時にトナーは、パチンコ玉の様なきれいな球体ではなかった。画像の美しさを追求する技術の進歩がトナーをきれいな球体に仕上げていった。

 

カラー複写機は写真画質を目指していたが、インクジェットの写真画質には追いつけなかった(注)。大きさと精度でインクジェットに負けてしまった。ゼロックスの衰退は同じ市場においての勝敗だが、パチンコは多くの規制の中で発展してきたのに時代の流れで消えゆく運命にある。

 

パチンコの衰退については、衰退が始まった20世紀末から多様なゲームが登場したことが原因とされているが、本来は賭博でありながら賭博として扱ってもらえなかったことが大きいのではないか。名古屋では一時換金率が75%まで高かった時代がある。寒い日でも毎日店の外まで行列ができていた。

 

(注)普通紙に印刷した時には、圧倒的にトナー画像のほうがきれいである。インクジェットに対するレーザープリンターのアドバンテージはどのような紙に印刷しても同じような品質が得られるという点である。10万円以下のカラーレーザープリンターでは、magicolorブランドが最も美しい出力である。これは雑誌などの商品テストでも明らかにされている。高いオフィス機と同じ中間転写ベルトが使われているからだ。

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