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2018.06/23 有機合成化学(1)

大学4年に進級し選択した講座は、有機金属化学(パラジウム錯体化学)で世界的な研究成果をあげていた石井研である。ただ、その翌年に石井先生が退官されるということで大学院への進学がどうなるかという心配があった。しかし有機合成化学への強い憧れから石井研を選択した。

 

結局大学院進学が決まってからその講座は閉鎖されることになり、その時の研究テーマを継続することができなくて、それならば、とつまらない意地からセラミックスの講座で大学院の研究生活を送ることになった。

 

本当は有機合成化学を勉強したかったが、大学の都合で講座が閉鎖されるとの事態になったのでへそを曲げたのである。学生が一人抵抗しても体制が変わるような時代ではなかったが、同じ講座の友人もいっそのこと興味のなかった勉強をするのも面白いかもしれない、と同じように無機の講座へ進学を決めたので、曲げたへその方向へ躊躇なく流された。

 

この友人はデンソーでセラミックス技術者として生きてゆくのだが、そのおおらかでゆるい人生観に共鳴はできなっかったがうらやましく感じていた。良く言えばしなやかな人生観で、打たれ強く強靭さが垣間見えて、見習いたいと思った。

 

大学院でセラミックスを勉強することになったのもこの人物の影響が少しある。人生において憤りを覚える事態に遭遇しても、このような人物が身近にいると悲観的な方向だけでなく楽観的な方向に少し目を向ける気持ちが出てくる。

 

今、日大の組織運営が問題になっているが、名古屋大学も同様で、大学院に進学する学生がいてもその希望を無視して容赦なく講座をつぶすような大学だった。この時つぶす方向で中心になって動いていた複数の先生とその講座の先生との人間関係が学生の間で噂になっていた。

 

また、この様なうわさは文春砲と同じで面白い話として尾ひれがついてゆく。しかし尾ひれをうわさ話から取り外しても週刊誌よりも低次元な理由である。石井研の先生方がおかしな先生ではなく誠実で教育熱心な方々ばかりであることを学生も知っていたので、噂は日大と同じようなつぶそうと画策されている先生方の人格がおかしいという内容になってゆく。

 

つぶそうとしている先生方の講座に所属している学生もうちの先生なら少しおかしいから学術的に高い研究成果を出している石井研をつぶしたいのだろう、と面白おかしく言うので、進学できなくて悩んでいる当方などは現実と噂の中で大学院進学そのものを悩むことになる。ゆるい性格の友人がいなければ大学院進学をやめていたかもしれない。

 

アカデミアの世界にこの時失望し、技術者として生きる決意をしたのだが、社会に出て学んだのは、日大の組織から見えてきたような人事というものがリーダーの好みで決まってしまう懸念である。人事を担当したならば、まず誠実真摯にその平等と公平性に務めなければ組織がおかしくなる。

 

有機合成化学分野をあきらめ、受験時に書いていなかった進学希望先としてセラミックスの講座を選択したのは、大学の組織運営にへそを曲げたつもりだったが、それがゴム会社で高純度SiCの企画をする下地になっていったので長い目で見れば悪くはない選択だった。

 

ただ当方の興味として有機合成に対する憧れがそれなりに強かったので、あの時有機合成化学に拘っていたならどのような人生だったのか後悔することもある。このような視点に立つとセラミックスの講座を選んだのはくだらない意地に見えてくる。

 

くだらない意地だったが、それからの40年間の技術者生活では良くも悪くも小説よりも刺激的な人生で、今こうしてこの年齢でも技術者として仕事をしているのが不思議である。ドラッカーが言うところの誠実真摯に強みを意識してどのように覚えられたいかを意識して生きる大切さを実感している。

カテゴリー : 一般

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