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2018.12/13 技術開発経験談(8)

年末年始の休日を返上し報告書をまとめ上げたが、研究としてはたった一つの真理しか得られなかった。測定された樹脂のSP値をゴムのSP値と比較してもその相関は、あるとはいいがたい結果だった。

 

原因は、指導社員が用意してくださった樹脂以外に当時の新素材樹脂(TPE)を評価に加える提案を当方がしたためで、SP値との関係を説明しにくい結果となった。

 

また、TPE以外の樹脂でもSP値がゴムと離れているにもかかわらず、うまく海島構造を形成していた事例も見出された。

 

指導社員は、研究のシナリオを考えて樹脂の手配をされていたのだが、当方の素人の提案と素人ゆえにロール混練条件を多数変更していたロールの操作がそのシナリオを無駄にしたような結果となった。

 

すなわち、得られた多数のデータを見ると、シミュレーションで示された防振ゴムのモデルにおいて、バネ定数を高めるには樹脂を添加し硬度を高めればよい、という仮説をほぼ立証してはいるが、そのバネ定数が必ずしもカタログ上の樹脂の弾性率と相関していなかった。

 

しかし、これはDSCの結果から樹脂補強ゴムに配合された樹脂の結晶化度が異なっていることが原因と推定され、その視点で結晶化度の異なるTPEを添加した系で確認したところ、その結晶化度とゴム硬度が相関していたという結果だった。

 

詳細は当時出願した特許をご覧いただきたいが、樹脂補強ゴムにおける樹脂の配合効果が単純ではないことに感動した。しかもそれがプロセスにも依存していたことから、指導社員に教えられた夢のカオス混合という混練技術に強く魅かれるようになった。

 

2011年に起業後カオス混合装置について、その開発費用を得るため経産省の補助金申請を数度行ったが、補助金を頂けなかった。また、大手樹脂メーカーに共同開発のお願いやコンサル契約をお願いしたりしたがかなわなかった。

 

仕方がないので中国樹脂メーカーとカオス混合装置の開発を進め現在に至るが、この7年間に当時をしのぐ事例が得られ、先月日本のシンクタンク大手KRIが主催されたシンポジウムで発表する機会を得た。数社から引き合いがきて良い年を迎えることが出来そうだ。

 

しかし日本の樹脂メーカーは混練技術に無頓着でよいのか?この7年間に開発された新コンセプトに基づく添加剤をある樹脂に添加した場合には、その添加効果がカオス混合に大きく依存している結果も出ている。この添加剤のすごいところは、添加により樹脂のTgを下げないが、Tmを下げたりその他の効果が得られることだ。

 

ただしこの効果はカオス混合で初めて現れる、混練技術に依存した樹脂の性能を上げる添加剤である。これは、樹脂メーカーの技術をブラックボックス化できる。このようなコンセプトは40年前のこの3ケ月の混練体験で思いついた。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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