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2019.05/24 ガラス転移(4)

無機ガラスではそこから結晶成長する様子をガラス転移点以下の温度で観察することができる。ただし、ガラス化する前に相分離して結晶成長している場合を除く。ガラス転移点よりも結晶化温度が低い無機ガラスの話である。

 

この時、ガラス相の組成と結晶質相の組成は異なる。すなわち、無機ではガラス相を構成する組成は決まっており、その組成が変化して結晶化が起きているのだ。そこでは原子の拡散も起きその拡散速度が問題になったりする。

 

ところが高分子のガラスでは球晶と組成が変わらない。これは共有結合でつながっているから当たり前だ、という人がいるが、これを当たり前の現象として見てはいけない。

 

また高分子では結晶化温度はガラス転移点よりも高いところにある。すなわち無機ガラスのガラスと高分子のガラスではガラス転移点という熱力学的共通項は存在するがその成り立ちが異なっている。

 

無機のガラスではその相を構成する原子の配位数の組み合わせが問題になるが、高分子では主鎖の運動性でガラス化温度が決まる。すなわち無機材料では非晶質になることはできても、ガラスを生成しない無機材料が存在する。無機の世界でガラスはガラスなのだ。

 

しかし、高分子材料ではすべての非晶質相はガラスである。ガラス化しない非晶質相は存在しない。ゴム会社でDSCを測定していた時に、Tgが現れない現象を見つけた。興奮して報告したところ指導社員から笑われた。そしてDSCを測定する時にTgの手前で3-5分昇温を止めるテクニックを覚えた。

カテゴリー : 高分子

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