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2019.07/26 高分子のプロセシング(21)

これは、高分子材料では必ず非晶部分が存在するためである。すなわち、高分子材料について熱分析を行うと、測定条件の影響で相転移である結晶化は観察されないことはあっても、相転移ではなく緩和過程の現象を示すTgは、結晶性高分子でも必ず観察される。

 

 

Tgの理論的取り扱い方について、粘度が1012Pa・s付近になるとガラス転移が起きる、という等粘性状態の考え方や、自由体積分率が0.025になった時にガラス転移が起きる、という等自由体積状態の考え方、その他等配位エントロピーの考え方など多数存在する。

 

 

等自由体積状態の考え方ではVが自由体積となり、Tg以下に冷却された時に一定値Vhgとなる。

 

 

ところが、混練して得られるペレットの密度ばらつきや成形体の密度ばらつきなど同一配合処方でも自由体積の量がばらついている、と考えなければ説明がつかない現象は多い。 

 

 

これは、グラフが平衡状態における現象を示しており、混練で得られるペレットは非平衡状態で冷却されて作られるから、として説明できるが、V+ Vを自由体積とする考え方も存在したりするので、形式知によるTgの理解は難しい。

 

 

経験知的には、溶融糸まり状の高分子が、冷却により体積が減少し、隣り合っている高分子のヒモ同士がぶつかり、歪を抱えたまま動けなくなる温度がガラス転移点Tgである。

 

 

これは、満員になっていない80%程度の乗車率の電車で急ブレーキがかかった瞬間を想像してみると理解しやすいかもしれない。高分子を急冷したときには恐らく悲鳴を上げる様な分子も存在するかもしれない。

 

 

ただし、電車がゆっくり停車するような状況では、乗客は皆自分の快適なポジションを探しつつ、それぞれの位置で落ち着く。高分子も同様で、溶融状態から平衡を維持しつつ冷却していったなら、結晶性樹脂の場合にはラメラができてそれが球晶に成長し、そしてガラスを生成して固まる。このガラスを生成した時の温度がTgである。

 

 

混練プロセスで平衡を維持しつつ冷却するのは困難であり、ガラス化過程で何処かの高分子に歪が残っている。ゆえに、Tg付近で試料の熱処理、アニールを行うと歪が緩和されて密度が上ったりする。

 

 

あるいは、溶融状態からフィルムを製造した時に、表裏で冷却速度が異なると、歪も表と裏で異なる。その結果、室温で放置した時に内部の歪が緩和してフィルムが反ったりする。

カテゴリー : 高分子

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