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2019.07/28 高分子のプロセシング(22)

このガラス化過程の歪について、昇温条件でDSCの測定を行うと、冷却時の履歴がTgに反映されてピークとして現れることもある。

この現象は、例えば結晶化速度の速い結晶性高分子で観察される。この時、体積が減少して高分子鎖の一部分が規則正しく並び、折れ曲がりながらラメラ晶を形成していく。

混練された高分子からペレットを製造するときの熱的変化は、急冷過程となる。このように溶融状態から冷却速度を早くした場合には、体積の収縮が冷却速度に追いつかず、そのままの構造が凍結されるので自由体積が多くなり、その結果密度は低くなる。

この時生成されるのは急冷ガラスであり、結晶化速度の遅い高分子であれば、全く結晶化しない場合もある。

結晶化速度が早い高分子でも結晶化しない場合や部分結晶化で止まる場合などまちまちで、これがペレットのばらつきの原因となる。

もし、これをゆっくりと平衡状態に近い条件で冷却をしたならば、徐冷ガラスとなる。厚みのある成形体の中心部はこのようになる可能性がある。

結晶性高分子であれば、昇温条件でDSC測定を行ったときに結晶化ピークが現れないほど結晶化が進む。

ここで注目していただきたいのは、急冷した場合と徐冷した場合では体積が異なる現象である。もし、急冷ガラスについて、Tg付近でアニールしたならば収縮して徐冷ガラスの密度に限りなく近づく。

余談だが、一般にアニールを行う時にはTg以下Tg-20℃以上の温度領域で長時間かけるが、Tg以上で急速アニールする特殊な技も開発されている。この場合も徐冷ガラスの密度に限りなく近づく。

いずれの条件で行っても、アニールにより急冷ガラスの体積収縮は生じる。もし結晶性高分子であれば、ラメラ間の非晶部分のパッキングが進み密度が上昇する。この現象を観察するための実験はガラス状態を理解するのに役立つ。

すなわち、ガラス状態はマクロな視点(通常の観察時間)で見る限り固体と同じであるが、紐のモデルの如く高分子鎖一本一本のレベルで見ると、高分子材料の温度に相当するエネルギーレベルで運動している融体(液体)の状態と同じである。

カテゴリー : 高分子

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