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2019.12/09 レピュテーション運動

身の周りで観察される高分子材料は、何らかの運動をしている。例えば、手元で操作しているプラスチック製のマウスの自由体積部分では、体温に相当するエネルギーで紐状の分子の一部が運動している。

 

そして、その運動はセグメントのミクロブラウン運動であったり、紐の末端あるいは側鎖基の回転運動だったりする。

 

また、高分子は、その分子の一次構造の方向に垂直な円盤を仮定して分子がうまくすり抜けられる直径を基準に考えた管の中を、あたかも蛇のごとく、一定の分子の長さを保ちつつ運動している。

 

この動きをレピュテーション運動というが、蛇やウナギの動きを想像すると少し不気味である。

 

このレピュテーション運動について次のような経験がある。すなわち、非相溶系のPPSと6ナイロンをカオス混合で混練すると相溶し、透明な樹脂液が混練機から吐出されるが、それが10年近く経過したら白濁してきた。

 

これは、カオス混合(非平衡状態)で一旦は相溶した組成物をTg以下に強制冷却して相溶状態のままガラス化しても、レピュテーション運動でゆっくりと平衡状態になろうとスピノーダル分解が室温で進行し、相分離した結果である。

 

この現象は、カオス混合装置の発明で得られた発見であり、21世紀になっても高分子分野ではこのような新しい現象が見つかる。形式知が完成していない分野では、過去の知の遺産の活かし方次第で研究開発の効率は変わる。

カテゴリー : 高分子

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