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2020.01/20 若手育成が難しい時代(2)

当方はゴム会社で3年のアメリカ留学の機会を得た。同僚には、上司が当方を追い出したいからチャンスが生まれた、と噂された。

 

上司には年に一度の面談で伝えていたSiCの研究を希望していたのに、ゴムの研究で名の知れた大学が留学先とされたので、そのような噂がでてもしかたがない。

 

そこで、当時SiCの研究で世界のトップを走っていた無機材質研究所へ留学先変更を上司に申し出た。

 

今回は語学留学と考えしばらくSiCのことは忘れろ、と上司に言われたが、もし留学の成果を真摯に考えるならば、無機材研こそふさわしい、と当方は回答している。

 

また、社長方針にもファインセラミックス市場への進出が、メカトロニクスと電池事業と並び重要課題と示されていた。

 

上司からそこまで言うならば、留学の話をつぶすぞ、と脅されたので、当方は、どうぞ、と回答している。

 

これは、今ならばパワハラ面談であるが、当方は新入社員研修の発表会で常務から受けた「科学的結論で造られたタイヤはタイヤではない」というパワハラ説教で免疫ができていた。

 

しばらくして、人事部長から呼び出され、上司ともめている理由を聞かれた。当方は、社長方針とセラミックスフィーバーの世間の状況も含め説明し、最後に上司から留学の話をつぶすと言われた話まで丁寧に回答している。

 

人事部長は苦笑しながら、予算が決まった後なので上司も留学先変更は大変と考えたのだろう、と話していた。

 

結局当方の留学を企画した上司の真意は不明だったが、無機材研留学の話を人事部と調整してくださったことには驚いた。

 

その後昇進試験に落ちたことがきっかけとなり、高純度SiCの合成実験のチャンスが生まれ、社長の2億4千万円の先行投資を受けて半導体治工具の事業がスタートしている。その成果で学位論文をまとめた話は以前この欄で書いたので省略する。

 

企業で留学の機会を与えられる、ということは、企業の立場では留学期間中人件費以上の赤字になっているはずで、留学する社員もそれなりの覚悟が必要だ。

 

企業で若手育成が成功するためには、若手の意識改革も必要となる。今は昔の様なパワハラで抑え込む技は禁じ手なので、若手の自己実現意欲を高める様な研修も必要である。

 

当時のゴム会社の役員は、第三者から見れば今でいうところのパワハラ体質そのものだったが、若手を鼓舞するエネルギーはすごかった。

 

留学先変更も役員から叱咤激励され、無機材質研究所を上司に申し出ている。役員が新入社員の指導のために現場まで出ていた、管理職にとって大変な時代だった。

 

カテゴリー : 一般

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