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2020.06/14 人事部長の言葉

無機材質研究所に留学して半年後に受験したゴム会社の昇進試験で落ちた。その結果、高純度SiCの新規合成ルートについて実験する機会が生まれたことを以前この欄で書いている。

 

これは無機材質研究所のI総合研究官が所長と調整されて実現したチャンスであるが、昇進試験に落ちたときにゴム会社の人事部長は、「君は人間リトマス試験紙だ」(注)と励ましてくれた。

 

人事部長の力でも研究開発部門の意向である昇進試験の結果を動かすことができず、組織の強い意志であることを知った言葉であるが、人事部長は留学を終えてからどこの部署に行きたいのか考えておくように、とも言われた。

 

これが一年後には、研究開発本部に残ることになり高純度SiCの事業化を推進するのだから、人生はわからない。

 

ちなみにこの時の昇進試験の解答は当時の社長方針に沿った唯一の解答だった、とも言われた。人事部長は落ち込んだ当方を激励されたかったのだろう、と今でも感謝している。

 

人事部長との面談の翌日から始めた4日間の研究で高純度SiCの合成に成功している。パイロットプラントではこの時の条件で試作を繰り返し、住友金属工業に提供している。人事部長の言葉が高純度SiCの事業化推進に一番大きい影響を及ぼした、と今でも思っている。

 

(注)当方を評価しない組織は悪い組織である、と激励してくれた。この激励で無機材研で生まれたチャンスを成功させて、昇進試験に書いた事業を実現させたいと人事部長に元気よく答えている。無機材研で行う実験や基本特許出願についてこの時にゴム会社で許可が出たのだが、この許可についても研究開発部門は好きなようにやってよい、という判断だった。これが研究開発本部長が代わり、大きくテーマの取り扱いが変わった。そして新たな本部長のリーダーシップで事業が立ち上がってゆくのだが、その後30年間ゴム会社の事業として推進され、当方が在職していたら、退職したであろう年に、当方の故郷愛知県の会社に事業売却されている。この高純度SiCの仕事には運命的なものを感じるとともに、誠実真摯に努力することの重要性を学んだ。

カテゴリー : 一般

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