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2020.08/27 企画を成功させるために(3)

どのような素晴らしい企画書でもそこからモノが生み出されなければ、企業内ではごみである。

 

また、組織の中で仕事を一人で完結している、というのはまれで、どのような企画でも関係する人が複数いる。その人たちの支援を得るためにもモノがあると企画の推進力は強くなる。

 

退職前に担当した中間転写ベルトの企画は、当方が立案した企画ではない。製品化まであと半年、というところで企画した人物から交代を頼まれたのだ。周囲には幕引きの責任を負うだけだという人もいた。

 

仕事の引継ぎ説明を聞き、まさにその通りだと感じたが、「貢献と自己実現」を実践するのにふさわしいテーマ(注)だと思った。

 

すなわち、もし成功させればそれは多大な貢献である。なぜなら、企画者は評価されるかもしれないが、製品化まで半年、企画責任者はプロジェクトメンバーに成功すると言っていたので、成功しても当方の成果にはならない。だから、貢献である。

 

自己実現については、学位を高純度SiCの技術で取得した当方にとって、高分子のプロセシングで大きなイノベーションを生み出すチャンステーマだった。

 

一流コンパウンダーが納入しているコンパウンドでは、絶対に完成しない仕事であることが見えていただけでなく、常識をひっくり返すアイデアでイノベーションを起こせば技術を成功させる可能性もあった。

 

30年の技術者生活で考えてきた「研究開発必勝法」の効果を試すためにうってつけのテーマだった。

 

6年近く研究開発され、製品化まであと半年しか残されていない状況で、歩留まりが10%前後しかない押出成形技術を利益の出る状態まで立ち上げる、これだけ難しいテーマをこれまで経験したことは無かった。

 

高純度SiCの仕事では、立ち上げに6年かかったが、企画立案から担当していたのでデスバレーを一人で歩く苦労があったが時間を十分に使えた。時間を十分に使えるというのは、時間は企画の要素ではないと言われているにもかかわらず、難易度に影響する。

 

しかも日本を代表するコンパウンドメーカーの技術者が関わってきても解決できなかったのである。「研究開発必勝法」の切れ味を確認するにはうってつけのテーマだった。

 

(注)企業内には、その仕事において大きな貢献をしたとしても評価されない立場がある。派遣社員の立場は同じ仕事を行っても賃金が異なるということで社会問題になっている。派遣社員ではなくても、40年前のゴム会社のように新入社員の2年間は査定をつけない仕組みとなっていたのは実態を考えると少しおかしい。残業代もつかない。しかし、工場試作を成功させたが始末書を書かされたうえ、同期よりも100円給与を下げられた面白い事例なので、この欄で紹介している。これは自虐的に表現しているのではない。成果主義と言っても必ずしも組織内で理想的な運営が難しいことがあり、成果を出しても評価されないことが起こりうるし、他人の成果を何かの理由で成果など出していない人の成果にしたりする場合も出てくる。その逆で他人の失点を成果を出した人につけたのが当方の新入社員の事例だ。このような評価は評価として好ましくなく、続けていると組織風土はおかしくなるが現実には正社員でも成果を出しても評価されない人を生み出している。おそらくドラッカーも不誠実な管理者により引き起こされる組織の不条理に気がついており、働くことの意味の一つを貢献としたのだろう。貢献と思って働けば、評価されなくてもあきらめることが可能となる。しかし、査定はつかないと言われた期間で成果(特許権も取得し英語の論文として掲載されている学術的にも価値ある成果だった)を出しても始末書及び減給処分では、忘れられない思い出となる。誠実な管理者は絶対このようなことをしてはいけない。許されるのは、平均的評価とするところまでだ。自分の責任を押し付けてはいけない。評価には、評価した人の誠実さが現れる。誠実な評価者は、成果を出しても評価できない時に事前にそれを告げる。評価後に謝罪として告げるのは誠実なように見えて、実は評価者として不誠実なのだ。評価者は成果を出しても良い評価をつけられない状態を自分の責任として告げなければいけない。これがなかなかできない人が多い。事前に告げた場合に、納得がゆかず怒り出す人もいる。当然である。だから後で謝罪の形を選ぶ評価者が多いのだ。このような場合に誠実かつ円満に対処するにはどうしたらよいのか。困った時には弊社へ相談していただきたい。

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