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2020.09/09 高分子の誘電率制御(1)

絶縁体セラミクスの中でペロブスカイトと呼ばれる一群の結晶は、強誘電体として知られ、周波数依存性があってもコンデンサー用材料として欠かせない部材である。

 

高分子ではフッ化ビニリデンはじめ一部のフッ素系或いはシアネート基を有する材料が強誘電ポリマーとして知られている。これらは、側鎖基も含めて電荷の偏りで発生する大きな双極子モーメントにより強誘電体としての性質を示す。

 

また、ペロブスカイト同様に圧電性も示す。今は昔となってしまったが、オーディオ業界の雄、パイオニアがフッ化ビニリデンを振動板として用いたヘッドフォーンやツイーターを発売した実績がある。

 

フッ化ビニリデンを振動板として用いたヘッドフォーンは能率が悪かったが、SN比の高い自然な響きをしていた。ヘッドフォーンで音楽を聴くのは苦手であったがこの美しい音に惚れて購入した。

 

ところで電気粘性粒体という材料が20年以上前に盛んに研究され、あの日産自動車ではサスペンションまで試作された。

 

電気粘性流体とは、絶縁油に半導体粒子を分散した液体であり、電場のONとOFFでそのレオロジー特性を流体から固体にまで制御可能な物質である。

 

この流体に電場をかけると、各粒子に双極子が生じ、その相互作用のため、粒子が電場と同じ方向に並んだクラスターを作る。

 

ONセットとOFFセットの応答性の良い電気粘性流体を設計するためには、半導体微粒子の設計が重要で、電場を受けると帯電しやすく、電場が無くなると帯電した電荷を速やかに無くす仕組みが重要である。

 

このような材料は科学的に考えていては、山中先生ではないが生きているうちに創り出すことはできない。ヒューリスティックな手法で、傾斜組成粒子や超微粒子分散粒子、コンデンサー分散粒子など瞬間芸的に生み出した。

 

この創造力は訓練すればだれでもできるのだが、当時のプロジェクトリーダーからどうしてそのような情報を仕入れたのか教えろ、と会議室で詰め寄られた。

 

頭を指さしたら、切れたので怖くなって会議室を飛び出したが、そのくらいインパクトのある発明だったようだ。

カテゴリー : 高分子

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