活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2020.11/23 技術者の解放(10)

当時検討されていた電気粘性流体は、シリコーンオイルに生焼けのカーボンを分散した処方だった。生焼けのカーボンを用いた理由は、この物質が半導体だったからだ。すなわちカーボンのように導電性が高くなく絶縁体領域に近い物質だった。

 

 

この処方の電気粘性流体をゴムの容器に封入し用いていたのだが、ゴムからゴム薬がシリコーンオイルに抽出されて増粘し、電気粘性効果が失活する問題が発生した。

 

 

これを改善するために界面活性剤を持ち出して研究し、否定証明により、この耐久性問題を解決できる界面活性剤は存在しない、と結論を出しているが、少し高分子をご存知の方であれば、なぜ界面活性剤なんだ、という突っ込みを入れたくなる。

 

シリコーンオイルという高分子に高分子の添加剤が染み出してきたのだから、コンパチビライザーを検討すべきだ、というアイデアを言い出すかもしれない。

 

否定証明に邁進しているメンバーに対して、当時そのような突っ込みをした人もいたようだ。当方が第三成分について本部内報告をしたときに、早い話がコンパチビライザーでしょう、と報告後したり顔で話しかけてきた人がいる。

 

 

そこで界面活性剤もコンパチビライザーも界面で機能する添加剤という視点が重要で、面白いことに見つかった添加剤はどちらにも属する、と回答している。

 

 

回答しながら、界面活性剤とコンパチビライザーをシームレスに扱えるのは技術者ゆえの特権だろうと思った。

 

 

科学者ならばそれぞれの専門家がおり、それぞれの形式知で物事を説明する。技術者は機能に着眼するので、界面活性剤と呼ばれようがコンパチビライザーと呼ばれようが、機能がうまく働けば「そんなの関係ない」。

 

 

実はしたり顔で話しかけてきた人は、電気粘性流体を古くから研究していたメンバーにコンパチビライザーの検討を勧めたそうだ。そうしたらバカにされた、とも言って笑っていた。

 

 

せっかくアイデアを提案したのにバカにされた腹いせもあって、わざわざ当方に笑い話として話しかけてきたのだろう。その方も科学で武装した研究者だったが、このような光景は科学で毒された研究所で見かけがちである。

カテゴリー : 一般

pagetop