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2020.12/07 技術者の解放(22)

難燃性天井材開発テーマが完了したので行ったごみ捨て作業で、高純度SiC製造用の前駆体合成条件を見つけることができた。

 

科学の視点では多数のブラックボックスが存在したが、高純度SiCを合成する目的を達成するために、それらの解明は必ずしも必要ではない。

 

ただ、品質管理の問題が残る。ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をただ混ぜただけでは、フローリー・ハギンズ理論に従い、相分離する。このような系へ触媒を添加しても不均一な混合物しか得られない。

 

均一な前駆体が合成されたかどうかについて確認するために、シリカ還元法の反応速度論結果を用いると品質管理可能だが、原料のスペックをどうするのかという問題が残った。

 

詳細は未公開のノウハウになるので省略するが、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが混ざる現象、例えばフェノール樹脂へポリエチルシリケートが拡散してゆく現象については、アカデミアの先生と研究を行っている。

 

この研究で、フェノール樹脂繊維にポリエチルシリケートを含侵させた後、焼成し、SiC化させて、表面がSiCで内部がSiCとカーボンが傾斜組成となった繊維を開発することができた。

 

そしてこの繊維とアルミニウムを複合化させて、C-SiC繊維複合アルミニウムを製造したところ、炭素繊維で強化したアルミニウムよりも高強度の材料を製造することに成功している。

 

すなわち、フェノール樹脂相へポリエチルシリケートが拡散する現象の研究とその結果を利用した応用研究を同時進行に行い、研究効率をあげている。

 

ちなみに、フェノール樹脂相へポリエチルシリケートが拡散する現象について触媒の存在が重要であることを見出している。触媒が無ければポリエチルシリケートはフェノール樹脂相内部まで拡散してゆかない。

 

企業の研究開発において、すべてのブラックボックスを科学的に解明しなければいけない、と誤解している人が多い。科学的研究が無くても新規技術の開発は可能なのでこのようなコンカレント開発が可能である。

 

また、科学的研究を行う時に、純粋にかつ厳密に研究を進める拘りは、時には重要である。ただし、それはその研究成果の次の一手が企業に利益をもたらすような時の研究である。科学と技術について理解していると開発効率を高めることが可能で、産学連携の重要性も見えてくる。

カテゴリー : 一般

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