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2020.12/18 アイデアの出し方(8)

20年以上前のライバル会社の特許はインチキ特許と断罪することは可能だが、特許が技術の権利書である、ということに気がつくと、このようなインチキと思えるような論法でも、貴重なアイデア情報と捉えることができる。

 

特許はすべてペテントと言っていた先生がいるが、これは了見が狭い。一見インチキに思われる特許でも、そこには特許を書いた人のアイデアの思想が込められている。

 

あるいは、特許を書いた技術者の力量が現れている。例えばライバル会社の特許からは、パーコレーションという現象を軽視しているか、知らない技術者の顔が見えてくる。

 

あるいは、当方の指導社員のようにずば抜けた能力の技術者だったかもしれない。パーコレーションというばらつきの現象を使い、科学的視点からは比較例とはならないようなサンプルを技術で安定なダメサンプルとして作り出し比較例とする手法は、当方も使用する。

 

繰り返すが、特許は技術の権利書であり、書かれた内容を実現できるならば成立する。特に実施例については、必ず実現する内容が書かれている。そうでなければ特許として成立できないのだ。

 

ペテントと呼ばれるインチキ特許のような怪しい特許には、隠されたアイデア或いは現象が眠っているケースが多い。科学的におかしくともその特許を書いた人の思想を想像すると新たなアイデアが出てくる。

 

例えば、特公昭35-6616実施例は、ライバル特許の比較例に書かれていたように、何も考えず実験を行うと導電性が出ない確率が高い。しかし、35年の特許に書かれてないパーコレーション転移の制御因子を用いると導電性が安定して実現される薄膜となる。

 

最も1990年前後の日本化学会の年会では、パーコレーション転移など議論されず、すべて混合則で議論されていた状況なので、ライバル特許を書いた技術者はパーコレーションを知らなかった可能性が高い。

 

ところで、導電性微粒子を絶縁体に分散した時に現れるパーコレーションという現象はいつ頃から知られていたのかというと、当方が生まれた1950年代に数学者の間で議論されていた古い現象だ。

 

当方がゴム会社に入社した時に、指導社員はこのことを教えてくれた。すなわち、クラスター生成理論があっても材料屋は混合則ですべてを説明しようとしている、と嘆いていた。

 

ローカルで知っている人は知っていてもそれが難解であると理解されず普及しないのが知の宿命である。感染症の問題でクラスターに注目が集まっているが、パーコレーションと聞いてコーヒーのパーコレーターを思いつく人は偉い。語源を知っている!

 

カテゴリー : 一般

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