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2021.03/25 SiC基多成分セラミックス

高純度SiCの事業化を進めているときに、SiCの分野で世界初の材料はできないか、という極めて難解な問題を上司から出された。

 

このようなわけのわからない指示を受けたときに、新入社員時代にはいろいろ質問をしたりしていたのだが、上司がよく理解していないのでこのような指示になる、と悟ってからは、部下を鍛えるありがたい仕事と思うようになった。

 

さて、どこがありがたいのかというと、問題そのものが抽象的なので回答の自由度が高い点である。すなわち、これは、SiCが入っておれば世界初である限り何でもよい、という問題だ。

 

そこで、切削時に発生する高温度で鉄と反応するのでSiCでは鋳鉄を削ることができない、と言われていたことを思い出し、鋳鉄を削ることができるSiCならば世界初になると考えた。

 

「SiC基切削チップの開発」というのが当時提案した企画であるが、この企画の内容を科学の常識に反するので世界初、などと説明したらつぶれることが分かっていたので、「世界初のマルチコンポーネントセラミックス」というコンセプトをでっち上げた。

 

2-3種類のカーバイドからなるセラミックスについては相図から予想がつくが、4成分以上になると研究事例がない大変難しい配合設計作業となる。

 

今ならば、ビッグデータをコンピューターに放り込み、AIに考えさせてデータマイニングする手抜きができるが、当時は、まだMS-DOSの時代である。

 

詳細にご興味のあるかたは問い合わせていただきたいが、計画的な試行錯誤法、いわゆるデータ駆動による配合設計で鋳鉄を削ることができるSiC基多成分セラミックスを開発し成功した。そして、この材料を切削チップの形状に加工した。

 

これを当時の東京工業試験所に持ち込みご評価いただいたところ、既存のサーメット切削チップよりも鋳鉄を長時間切削加工できたのでびっくりした。

 

抽象的な問題から実用的な切削チップとの評価を頂くまで、4カ月程度だった。タグチメソッドも効率よく実験を進めることができるが、当方の編み出したデータ駆動配合設計手法は、さらに効率が良い。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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