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2021.04/30 試行錯誤とラテン方格

実験計画法やタグチメソッドで用いるラテン方格は、試行錯誤を統計的に効率よく実施できるようになるので便利なツールである。当方は、高純度SiC前駆体の合成方法の開発や、電気粘性流体、SiC基切削チップの開発でラテン方格を用いた試行錯誤により、成果を出している。

試行錯誤というと科学的ではないという理由で軽蔑される人がいるが、科学的に業務を進めていては天文学的工数が必要となる仕事でも短期間に成果を出すことができる、侮れない方法である。

但し、そのためには少し頭を使う必要がある。頭の使い方として、ラテン方格はその一つである。ほかにもヘディングを含め頭を使う方法があるので、機会があればこの欄で紹介したいが、ラテン方格は、説明しやすく、また多くの人に納得いただけるツールである。

ここで、「多くの人」としたのは、世の中には「科学こそ命」と、科学的方法以外を排除する人がおられるので、少し気を遣った表現である。

ラテン方格の使い方は簡単であるが、試行錯誤でありながら実験の「計画」を立てる必要があるので少し面倒である。しかし、少しの手間暇かけただけの効果はある。

例えば、SiC基切削チップの開発では、開発成果を用いて旋盤で鋳鉄を削ることに成功している。昔日本化学会で発表しているが、ほとんど注目されていないので、発表する場を間違えたと思っている。

SiCチップで鋳鉄を削れないことをそもそもご存じない方が多い、鉄とシリコンの化学反応が起きてあっという間にチップが摩耗し、その表面は独特の形状になる。昔、東京工業技術試験場の先生にご指導されながら、切削チップの評価を行ったが、SiCでは、鉄系の鋼材をほとんど削れなかった。

しかし、試行錯誤で見出したSiC基多成分セラミックスアロイ切削チップでは、面白いように鉄系の鋼材を削ることが可能だった。当時は、高純度SiCを用いていたが、その辺の研磨剤クラスのSiCでも製造可能な切削チップなのでコストの安いセラミックスチップを提供可能である。

残念ながらこのテーマは、切削チップの事業を認められなかったので、試作までで終わっている。ご興味のあるかたは問い合わせていただきたいが、試行錯誤でもびっくりするような成果を出せる一例である。

この時、SiCに組み合わせるカーバイド系化合物をラテン方格に割り当てて組成を決定している。セラミックスの配合を決めるときに相図を使用するのが常識であるが、相図が不明な場合の科学的方法では時間がかかるので躊躇なくラテン方格を持ち出している。

カテゴリー : 一般

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