活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2021.05/28 高分子のTg

ガラス転移点(Tg)は、ガラスで観察される比熱変化の生じる温度である。ガラス状態は、無機材料でも高分子材料でも存在する。面白いのは、無機材料の非晶質体では、Tgが存在する場合だけをガラスと呼んで区別している。

高分子材料の非晶質体では、すべてガラス状態という前提でその体系が出来上がっている。面白いのは、Tgを有するはずの高分子材料を熱分析(DSC)したときに、Tgが観察されない現象が時々現れる。

そのようなときは、DSC測定時にTgと思われる温度付近で昇温を一時停止し、少しアニールしてから測定を継続するとTgが現れる。少し怪しいテクニックだが、高分子の研究者ならば皆知っており、論文にDSCを載せる必要がある時に、隠れてこのテクニックを使用している人もいるはずだ。

捏造ではないか、とも言いたくなる姑息な手段だが、何故か学会でも話題になっていない。高分子の非晶質相にはTgが存在しなければいけない前提になっている。そうでなければ高分子の非晶質相はすべてガラス状態という前提が崩れるからだ。

しかし、若い研究者はTgが現れない高分子の非晶質相とはどのようなものなのか考えた方が良い。当方は、考える時間がもったいないので、DSCを測定するときには、あらかじめTg近くの温度で2分ほど昇温を停止し、Tgが現れない状態に会わないようにするが。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop