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2021.06/03 中間転写ベルトの問題

15年以上前に、表題の問題解決を相談された。一流コンパウンドメーカーからコンパウンドを購入して、押出成形技術を改良しながら進めてきたが、歩留まりが低すぎてこのままの技術で生産を開始したら事業が赤字になる、という問題である。

この問題について、ゴム会社に入社して現場実習した時の経験知をすぐに生かせる、と当方は考えたのだが、相談者は、とにかく6か月しか時間が無いので、現在の技術のまま歩留まりを上げてほしい、と無茶苦茶なことを言ってきた。

資料は科学的にまとめられていたのに、言っていることはまとまっていない。自分ではもうどうしようもない状態になった時に、人間は必死になる。必死になると科学などどうでもよくて、とにかく助けてほしい、となる。

助けてほしいのだが、自分の進めてきた仕事の成果を評価される状態で完成させてほしい、とさらにムシの良いことを考えたりするので、問題は矛盾を内包し非科学的で難しくなる。

配合処方を見れば問題点がパーコレーション転移と関係していることをすぐに理解できた。すなわちパーコレーション転移を制御するために配合処方を変更しなければ、科学的な解決などできない。

1990年代にパーコレーション転移の制御は話題になっていたので、当時ならば外部のコンパウンドメーカーにコンパウンドを依頼したときに問題点を理解していたはずである。

それを製品化直前まで頭を使わず推進してきたのが一番大きな問題なのだが、製品に採用が決まった責任の重圧から、配合処方もプロセスもそのままの状態で改良をやってほしい、というわけのわからない依頼をしてきた。

相談者に同情しその身代わりになる、と腹をくくれば簡単な問題だった。当時窓際の立場だったので相談者の代わりに責任をとって早期退職をする覚悟をすればよいだけである。

この意思決定ができれば、現在開発中の中間転写ベルトではなく、従来品を使えるように関係部署との調整をしておいて開発を進めればよい。

処方もプロセスもそのままにして何も手を加えることなく歩留まりを上げる改良など、できるわけがないのだ。このような無茶苦茶な問題に対する昔の人の知恵の伝承として一休トンチ話がある。

一休さんならば、屏風からトラを追い出してくれたなら捕まえましょう、というトンチの応用(注)で逃げたのだろうけれど、当方は何とかして自分でトラを屏風から追い出してみようと考えてしまう性分である。

(注)この問題では、ストランド状態で抵抗が安定しているコンパウンドを外部のコンパウンダーから調達していただければ、請け負いましょう、となる。もっとも、それが不可能と分かっていたので当方に相談に来られたのだが—-

カテゴリー : 一般

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