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2021.09/06 材料の科学と技術(2)

配合なり組成から直接機能を導くことができる、という誤解があるので、配合なり組成を設計しても機能が発現しなかった時に否定証明を展開したりする。


もし、組成→機能を研究しています、という人がいたら、それは当方のFDを壊したような危ない人だから相手にしない方が良い。材料設計において組成からまず何が決まるのかというと物質の構造である。そしてその構造が唯一決まると安定動作する機能が得られるのだ。


低分子でも高分子でも、セラミックスでも金属でも組成からすぐに機能を結び付けてはいけない。組成から決まる構造を見極める必要がある。なぜなら、プロセシングが複数ある時には、組成とプロセシングの組み合わせで多数の構造が生まれるためである。プロセシング技術の重要性がここにあるが、後日説明する。


学生時代に研究し論文も書いたシクラメンの全合成の体験から低分子の例を説明する。この合成の最終段階でE体とZ体ができ、片方はシクラメンのいい香りとなるが、片方は思い出したくない香りである。この香りの機能は分子構造からきている。ちなみにこの研究は1977年頃JACSにショートコミュニケーションとして掲載された。


高分子やセラミックス、金属では説明の必要がないかもしれない。低分子の有機合成から無機高分子合成、セラミックス合成、繊維補強金属などいろいろな材料開発の経験をすると、組成から構造が唯一に決まるわけではなく、そこにおけるプロセシングの重要性が見えてくる。


困ったことに自分で手を汚して材料開発をした経験が乏しいと、このプロセシングの重要性を認識しないばかりか、組成から一義的に機能が決まるような間違いを主張したりする。組成とプロセシングの組み合わせから構造が決まり、構造が決まると機能が発現するのである。

カテゴリー : 一般

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