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2021.09/15 学位論文

「リン、ホウ素及びケイ素化合物を用いた機能性材料のケミカルプロセシングとその評価」は、中部大学渡辺先生が提案してくださった論文のタイトルである。

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当初英語論文を寄せ集めまとめただけの学位論文下書きが有名国立大学の先生のご指導で出来上がっていたが、転職時のごたごたで一時学位をあきらめた。しかし、中部大学で改めて学位取得のチャンスができたので、新たに書き直すことになった。

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そのとき高純度SiCの研究論文はじめ英語で書かれた論文を日本語で書き直すように指導された。その理由は、コピペ防止である。当時から、論文は英語で書くことが推奨されていたので、大学4年の時のJACSへの投稿論文や修士論文を英語で書いていた。

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だから、学位論文を英文でまとめることに抵抗は無かったし、そのほうが簡単だったのだが、英文は英借文とよんでも良いような文章であり、中にはコピペと言われかねない文章もあった。

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ところが一度英語でまとめられたものを日本語に直す作業は簡単なようで難しい。原因は化合物名や専門用語の日本語にある。適当に日本語で訳すわけにはゆかず、翻訳のルールがある。さらに、学位論文の表題が変ったのだから大変である。

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特許のような適当な日本語では、学位論文を書けない。むしろ英語の方が簡単な理由は、専門分野には英語論文の方が多いからで、そこから英文や化合物名を引っ張てくれば、簡単にまとめられる。うっかりするとコピペになるので注意を要するが、日本語よりも英語でまとめる方が簡単だと内心思っている研究者は多いのではないか。

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日本語への書き直しや論文タイトルの変更など苦労して学位論文をまとめてよかったと思えるのは、このことがきっかけで、プロセシングの重要性に改めて気がついたことである。企業で材料の研究開発に携われば多くの人はそれに気がつくはずだが、その体系化までは考えない。

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学位論文をまとめるためには、一度それを体系化する必要があり、そのうえで自分のフィールドをまとめてゆく。安直に有名国立大学で学位を取らなくてよかった、と思えるのは、それが今飯の種になっていることである。

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ちなみに学位論文を100部印刷したが希望者が多く全部なくなった。それどころか、某出版社から出版の依頼が来たが、さすがに少し気恥ずかしく要約版の連載で承諾していただいた。

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「学位は足の裏についた米粒」(注)とよく例えられるが、当方の足の裏はいつもきれいにしていたので、その米粒を食べることができている。研究者が論文のゴーストライターのアルバイトをしていたのでは足の裏以外もけがれているだろう。

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(注)とるまで気になるが、とってみても食えない、という意味である。

カテゴリー : 一般

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