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2021.09/27 高純度SiC開発(8)

高純度SiCの開発企画は研究所内では全くの不評で、海外留学の話が当方に提案された。しかし、その行き先はSiCの研究ができる環境ではなかった。

そこで、当方は当時SiCの研究で世界の注目を集めていた無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)と調整し海外留学の代わりに無機材質研究所へ2年留学することになった。

その後、留学中に研究開発本部長が交代するとともに研究所長はじめ組織体制が変った。以前この欄で高純度SiC新合成法が生まれた時の状況を書いたので省略するが、2億4千万円の先行投資とファインセラミックス研究棟の建設があり、2年間の留学を1.5年で切り上げ、ゴム会社で高純度SiCの事業化を推進している。

ここまでに至るごたごたについて省略しているが、大切なことは、担当者には直属上司の方針や職場風土などから会社のイメージが形成されるが、それは誤解であり、正しくは社長がその企業の実体である。

迷ったり悩んだ時には、担当者にとって遠い存在かもしれないが、社長をよく見つめてみることである(すなわち、社長方針や機会あるごとに社長が話される言葉などを読んでみる)。

例えば、直属の上司の方針と社長方針とが乖離しているときには、直属の上司が間違っている、とまず「悟る」ことが大切だ(大きな組織では、方針管理のすり合わせを行っても誤った方針が設定されたりすることは、方針管理を伝言ゲームと勘違いしている職場では時々生じる。)。

悟った結果の行動についてはそれぞれの判断になるのだが、当方は、新入社員研修で「火中の栗を拾う人材を求めている」、と言われた社長の言葉を信じて、それに従って拾ってみたら、成果を出しても昇進試験に落とされたりと火だるまになった、というわけだ。

ただし、社長方針として「ファインセラミックスを事業の柱に」と出ていたのに、研究所の方針が曖昧となっていたことに憤りを感じていたので、火だるまになりながらもゴム会社の社長を信じ行動した。

信じた結果、人事部長はじめ新事業開発室室長、新しい研究開発本部長など多くの援助者に恵まれ、住友金属工業とのJVとして事業を立ち上げることができた。そしてそれが30年つづいた。

ドラッカーは、30年経ったら事業を見直せ、と言っていたが、ゴム会社は見直しを行い、2018年に愛知県の「MARUWA」に事業譲渡している。

ゴム会社で企画した「高純度SiCの開発」の30年間を眺めてみると、経営の力を感じ取ることができる。ただし、その種を作るのは若い力であることを今一度経営者は考える必要がある。


<注>当方が転職の決断をしたのは、FD事件を研究所で隠蔽化されたからである。おそらく社長まで重大事件の全貌は伝わっていないと思う。最近は、このような隠蔽体質が引き起こす問題で社長が謝罪するシーンをよく見るが、また、財務省の忖度事件では、現在の自民党の総裁選レースにまで影響が出ており、隠蔽=大きな損失を招く、という考え方になりつつある。隠蔽を習慣化し放置すると組織は悪の巣窟となる。当方が驚いた事実は、学会賞の推薦書に虚偽を平気で書くような輩が現れたり、当方の残してきた書類等が消えていたり、と不可解な事件が起きている。組織内の悪の連鎖が問題となるのは、その証拠が社会に染み出してあふれてくるからだ。不謹慎な社員や管理職により会社の社会的信用を落とすことになる。当方は記念にいくつかあふれ出した証拠を保管している。企業活動を、ドラッカーが言っていたように、なぜ誠実真摯に行う必要があるのかは、昨今のSNSにおける告発を考察すれば容易に理解できるはずである。



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