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2022.05/26 ジョー・パス(4)

ジョー・パスの教則本や彼のビデオ説明では、スケールはメジャースケールとマイナースケール、ドミナントスケールの3つを覚えればよい、と言っている。


これは記憶力が衰えた老人にはありがたい説明であるが、かつて義務教育で習った音楽の形式知と体系が異なる。昔の形式知からジョーパスの世界観を眺めると易しいように見えるが、実は体系を再構築する作業にはそれなりのエネルギーが要求される。


例えば、既に身についたメジャースケールとマイナースケールとは、かたやドから始まり、オクターブ高いドで終了するのに対し、3度下のラから始まりラで終わる関係である。


コードで示せば、ドミソのCコードとラドミのAmの関係になる。しかし、彼の教則本では、Cに対してCmがマイナーコードとなるような説明だ。「なるような」と表現しているのは、そもそもその関係もそれほど強い紐づけがされているわけではない。


このあたりの意味を理解するのにも一苦労する。あくまでもメジャースケールとマイナースケールの違いは響きの違いだけを意味しており、CとCmの紐づけは練習する時の説明に過ぎないのだ。


ちなみにマイナースケールには、義務教育で学習したハーモニックマイナー以外に、ナチュラルマイナーとメロディックマイナーがある。


身についた体系を再構築できると、マイナースケールが3種に分かれる合理性を「なんとなく」理解できる。この曖昧藻琴とした部分の残る知が、ジョーパスの暗黙知である。


科学の暗黙知を伝えることはかなりの困難を伴うが、音楽ではその音の響きを頼りに暗黙知に触れることが可能である。クラシック音楽の愛好家はまさにそれを楽しんでいる。


技術の暗黙知も音楽に似たところがあり、技術により高められた機能について研究すると科学ではうまく説明できない現象に出会う。まさにそれは技術者の暗黙知による成果である。

カテゴリー : 一般

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