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2022.09/09 ポリカーボネートより優れた樹脂

写真会社に20年間勤務したが、最後の5年間は複写機のキーパーツ開発に従事している。きっかけはPPSの押出成形で半導体無端ベルトを製造していた部長がリーダーを代わってくれ、と言ってきたことから始まっている。


半年後に部品供給しなくてはいけない状況で歩留まりが10%以下なので引き受ける人もいないような仕事だが、当方は幸運にも窓際族となっていたので引き受けている。


窓際に10年勤めるよりもこの歩留まり10%以下の仕事の責任をとってパッと散るのも良いかと思ったわけではない。説明を聞いてゴム会社の指導社員から出された宿題を完成させるにもってこいの仕事と思ったからである。


20年以上も昔の宿題なのでどうでもよいのだが、カオス混合という言葉を忘れられないでいた。カオスを混合するのである。混沌から何が生み出されるのか、ファンタジーの世界である。


しかも、ポリカーボネート(PC)が採用された原因から非常識とも思われる割れやすい、すなわち靭性が低いことで有名なポリフェニレンスルフィド(PPS)で開発をしているところにも魅力を感じた。


PPSの難燃性はPCよりも高い。しかし結晶化しやすい樹脂であり、脆い。さらにこの樹脂のパーコレーションの制御は結晶性樹脂ゆえに難しい。


リーダーを代わってほしい、と言ってきた部長は、割れやすいPPSを割れにくくする技術を開発し成功間近まで来たが、歩留まりをあげることがどうしてもできない、製品化がうまい当方に何とかしてほしい、と頭を下げてきた。


しかし、この割れにくくする技術が歩留まりを下げている大きな原因であることに気がついていない。PPSの靭性を高めるためにPPSに非相溶な6ナイロン(6PA)を配合していた。


これがパーコレーションの制御を難しくする。パーコレーションという現象を理解しておればコンパウンドの設計をもう少し気の利いた配合にする。


特許を調査してPPSの配合設計思想を研究したところ、靭性改善に関する発明が多く6PAの配合アイデアは高分子技術では国内で一流のT社から特許出願されており、海島構造の相分離が公知となっていた。


このような高次構造の材料に導電性が良いカーボン粒子を添加してパーコレーションを制御したいならば、6PA相にカーボンをすべて偏在させるような設計にしなければ導電性の盛業が難しくなる。


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カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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